最終更新
リンドくん
たなべ先生、C++のvector
やmap
ってとても便利ですけど、中身はどうなってるんですか?自分でも作れるものなんでしょうか?
たなべ
いい質問だね!vector
やmap
の中身を理解するには、クラステンプレートの仕組みを知ることが一番の近道なんだ。
今日は実際に簡単な版を自作してみることで、その仕組みを学んでいこう。
C++を学んでいる方であれば、std::vector
やstd::map
といったSTL(Standard Template Library)のコンテナを使ったことがあるのではないでしょうか?
これらのコンテナは非常に便利で、多くのプログラムで活用されています。
しかし、これらがどのように動作しているのか、なぜ様々なデータ型で使えるのか、疑問に思ったことはありませんか?その答えはクラステンプレートという仕組みにあります。
この記事では、C++のクラステンプレートの基礎概念から始めて、実際に簡単なvector
やmap
のようなコンテナを自作することで、テンプレートの仕組みを体系的に理解していきます。
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リンドくん
そもそもテンプレートって何なんですか?普通のクラスとは何が違うんでしょう?
たなべ
テンプレートは簡単に言うと「型の鋳型」のようなものなんだ。
一つのクラス定義で、int
やstring
など様々な型に対応できる「汎用的なクラス」を作ることができるんだよ。
クラステンプレートは、一つのクラス定義で複数の型に対応できる仕組みです。
例えば、整数を格納する配列クラスと文字列を格納する配列クラスを別々に作る必要がなく、一つのテンプレートクラスで両方に対応できます。
従来の方法では、以下のように型ごとに別々のクラスを作る必要がありました。
これでは同じような処理を型ごとに何度も書く必要があり、非効率ですよね。
クラステンプレートを使用すると、一つの定義で様々な型に対応できます。
このように、T
という型パラメータを使うことで、どんな型でも格納できる汎用的な配列クラスを作ることができます。
使用する際は以下のように型を指定します。
このような仕組みにより、コードの重複を避けながら、型安全性も保つことができるのです。
リンドくん
実際に作ってみたいです!まずはvector
みたいなものから始められますか?
たなべ
もちろん!まずは基本的な機能だけを持ったMyVectorクラスを作ってみよう。
動的配列の基本的な仕組みを理解できるよ。
まずは、std::vector
の基本的な機能を持った簡単なクラステンプレートを作成してみましょう。
作成したMyVectorクラスを実際に使ってみましょう。
このように、一つのクラステンプレート定義で、様々な型の動的配列を作ることができます。
テンプレートの威力を実感できるのではないでしょうか?
リンドくん
自作はとても勉強になりました!他にも知っておくべきテンプレートの技術はありますか?
たなべ
テンプレートの特殊化や型の制約など、より実践的なテクニックがあるんだ。
これらを知っておくと、もっと高度なテンプレートクラスが作れるようになるよ。
テンプレートの特殊化とは、特定の型に対して異なる実装を提供する機能です。
例えば、bool型の場合だけ特別な処理を行いたい場合に使用します。
リンドくん
自作したクラスと実際のSTLって、どのくらい違うものなんでしょうか?
たなべ
実際のSTLはパフォーマンス最適化やメモリ効率、例外安全性など、プロダクションレベルで必要な多くの機能が実装されているんだ。
自分たちが作ったのは「理解のための簡易版」と考えると良いね。
実際のstd::vector
やstd::map
には、自分たちが実装していない多くの高度な機能があります。
std::vectorの高度な機能
std::mapの高度な機能
自作したクラステンプレートを通じて理解できたことは以下のようなものではないでしょうか?
これらの知識は、より高度なC++プログラミングの基礎となります。
今回の学習を踏まえて、次のステップとして以下のような学習をおすすめします。
リンドくん
テンプレートの仕組みがよくわかりました。これからもっと勉強してみたいです!
たなべ
素晴らしい!クラステンプレートを理解すると、C++のライブラリがどう動いているかが見えてくるし、自分でも再利用可能なコードが書けるようになるんだ。ぜひ続けて学習してみてね!
この記事では、C++のクラステンプレートの基礎から実践まで、vector
やmap
の自作を通じて学習してきました。
クラステンプレートの理解は、現代的なC++プログラミングの必須スキルです。
STLを効果的に活用するためにも、また自分で再利用可能なライブラリを作成するためにも、この知識は非常に重要です。
さらに深く学習したい方は、実際のSTLのソースコードを読んでみたり、より高度なテンプレート技法(SFINAE、コンセプトなど)について調べてみることをおすすめします。
また、実際のプロジェクトでテンプレートを活用してみることで、より実践的なスキルが身につくでしょう。