リンドくん
たなべ先生、「ファイアウォール」ってよく聞くんですけど、どんな仕組みなんですか?
たなべ
ファイアウォールはネットワークセキュリティの最前線を守る門番みたいなものなんだ。
その門番にも「パケットフィルタ型」と「ステートフル型」という2つのタイプがあって、それぞれ警備の仕方が違うんだよ。
ネットワークセキュリティを学び始めると、必ず出会うのが「ファイアウォール」という言葉です。
Webサーバを構築したり、企業のネットワークを設計したりする際に、ファイアウォールは欠かせない存在となっています。
しかし、「パケットフィルタリング」や「ステートフルインスペクション」といった専門用語が飛び交い、初心者の方にとっては理解しにくい概念かもしれません。
この記事では、ファイアウォールの基本的な仕組みから、パケットフィルタとステートフルの違いまで、初心者の方でもしっかり理解できるよう、できるだけわかりやすく解説していきます。
HackATAは、エンジニアを目指す方のためのプログラミング学習コーチングサービスです。 経験豊富な現役エンジニアがあなたの学習をサポートします。
✓ 質問し放題
✓ β版公開中(2025年内の特別割引)
リンドくん
そもそもファイアウォールって、何を守っているんですか?
たなべ
ファイアウォールは不正なアクセスからネットワークを守る防護壁なんだ。
家に例えると、玄関のセキュリティシステムみたいなものだね。誰が入っていいか、誰を外に出していいかを判断してくれるんだよ。
ファイアウォール(Firewall)とは、その名の通り「防火壁」を意味する言葉で、ネットワークセキュリティにおいては内部ネットワークと外部ネットワークの境界に設置され、通信を監視・制御するシステムのことを指します。
ファイアウォールの主な役割は以下の通りです。
インターネットに接続されたサーバやネットワークは、常に外部からの攻撃にさらされています。
実際、サーバを公開すると、わずか数分で世界中から無数のアクセス試行が行われるのが現実です。
ファイアウォールがない状態でサーバを公開すると、以下のような危険があります。
こうした脅威から守るために、ファイアウォールはネットワークの第一線の防御として機能するのです。
ファイアウォールは主に以下のような場所に設置されます。
多くの場合、企業ネットワークでは多層防御の考え方で、複数の箇所にファイアウォールを配置することが推奨されています。
リンドくん
パケットフィルタって、パケットを「フィルタ」するんですよね?どうやって判断しているんですか?
たなべ
その通り!パケットフィルタは、通信データ(パケット)のヘッダ情報を見て、通すか止めるかを判断するんだ。
荷物検査で送り先や送り主を確認するようなイメージだね。
パケットフィルタリング型ファイアウォールは、最も基本的で古典的なタイプのファイアウォールです。
その名の通り、ネットワークを流れるパケット(データの塊)を一つ一つチェックし、設定されたルールに基づいて通過させるか遮断するかを判断します。
パケットフィルタが判断材料として使う情報は以下のようなものです。
これらの情報は、パケットのヘッダ部分に含まれており、パケットフィルタはこのヘッダ情報だけを見て判断を行います。
実際のパケットフィルタリングのルール設定を見てみましょう。
例えば、Linuxのiptablesというツールでは、以下のようなルールを設定できます。
このルールは以下のような意味になります。
パケットフィルタリング型ファイアウォールには以下のような利点があります。
一方で、パケットフィルタリングには重要な限界があります。
これらの限界を克服するために登場したのが、次に説明するステートフルインスペクションです。
リンドくん
ステートフルって「状態を保持する」っていう意味ですよね?パケットフィルタと何が違うんですか?
たなべ
鋭いね!ステートフルは通信の「状態」を記憶して、その文脈を理解できるんだ。
例えば、「このパケットは先ほど送信したリクエストへの正当な応答だ」というように判断できるんだよ。
ステートフルインスペクション(Stateful Inspection)またはステートフルパケットインスペクションは、パケットフィルタリングを進化させた技術です。
この技術の最大の特徴は、通信のセッション(状態)を追跡することです。
具体的には、以下のような情報を記録・管理します。
これにより、通信の全体像を把握し、より高度な判断が可能になります。
パケットフィルタとステートフルの違いを、具体的な例で見てみましょう。
パケットフィルタでは、行きと帰りの通信をそれぞれ別のルールで許可する必要があります。
ステートフルでは、一度確立した通信に対する応答は自動的に許可されるため、ルールがシンプルになります。
Linuxのiptablesでステートフルな設定を行う例を見てみましょう。
このルールの意味は以下の通りです。
ステートフルインスペクションには以下のような大きな利点があります。
一方で、以下のような課題もあります。
それでも、現代のファイアウォールでは、これらの課題を克服する技術が実装されており、ステートフルインスペクションが標準的な機能となっています。
リンドくん
じゃあ、もうパケットフィルタは使わないんですか?
たなべ
いや、そういうわけじゃないんだ。それぞれに適した使い道があるんだよ。
状況に応じて使い分けることが大切なんだ。
シンプルなパケットフィルタリングが適している場面もあります。
一方、ステートフルインスペクションが適しているのは以下のような場面です。
実際の現場では、両方の技術を組み合わせて使用することも一般的です。
例えば、以下のような構成が考えられます。
この多層防御により、セキュリティと性能のバランスを取ることができます。
リンドくん
実際にファイアウォールを設定するときに、気をつけることはありますか?
たなべ
うん、いくつか重要なポイントがあるよ。デフォルト拒否の原則や最小権限の原則など、セキュリティの基本を押さえることが大切なんだ。
ファイアウォール設定の基本は、「明示的に許可したもの以外はすべて拒否する」という考え方です。
この方針により、設定漏れによる脆弱性を最小限に抑えられます。
必要最小限の通信だけを許可することも重要です。
例えば、Webサーバなら以下のようなルールになります。
ファイアウォールは、通信のログを記録し、定期的に確認することが重要です。
ログを分析することで、以下のようなことがわかります。
ファイアウォールのルールを設定したら、必ず動作確認を行いましょう。
特にリモートサーバの場合は、SSH接続を失わないよう注意しながら設定を進めることが重要です。
リンドくん
ファイアウォールの仕組み、だいぶ理解できました!パケットフィルタとステートフルの違いがよくわかりました。
たなべ
それは良かった!ファイアウォールはネットワークセキュリティの基本中の基本だからね。
これからサーバ構築やネットワーク設計をするときに、ぜひ今日学んだことを活かしてほしいな。
この記事では、ファイアウォールの基本から、パケットフィルタリングとステートフルインスペクションの違いまで解説してきました。
重要なポイントを改めて確認しましょう。
ファイアウォールは、サーバを公開する際やネットワークを構築する際に必ず設定すべき重要なセキュリティ対策です。
最初は難しく感じるかもしれませんが、基本的な原則を理解すれば、効果的な設定ができるようになります。
ネットワークセキュリティは、常に進化し続ける分野です。
基本をしっかり押さえた上で、新しい攻撃手法や防御技術についても継続的に学んでいくことが大切です。