リンドくん
たなべ先生、「JWT」ってよく聞くんですけど、これって何なんですか?セキュリティに関係あるんですよね?
たなべ
JWTは「JSON Web Token(ジェイソン・ウェブ・トークン)」の略で、Webアプリケーションでユーザー認証を行うための仕組みなんだ。
でも、便利な反面、使い方を間違えると大きなセキュリティリスクになるんだよ。
現代のWeb開発において、ユーザー認証は避けて通れない重要な要素です。
その中でもJWT(JSON Web Token)は、特にAPI開発やモバイルアプリとの連携で広く使われている技術です。
しかし、JWTは便利な一方で、正しく理解せずに使うと深刻なセキュリティ問題を引き起こす可能性があります。
特に「一度発行したトークンを無効化できない」という特性は、多くの開発者を悩ませています。
この記事では、セキュリティ学習を始めたばかりの方でも理解できるよう、JWTの基本的な仕組みから安全な実装方法、そしてトークンを無効化するための「ブラックリスト戦略」まで、実践的に解説していきます。
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リンドくん
そもそもJWTって、どういう仕組みなんですか?普通のログインとは何が違うんでしょう?
たなべ
従来のセッション管理とは違って、JWTはサーバー側で状態を保存しないのが大きな特徴なんだ。トークン自体に必要な情報が含まれているから、スケーラブルなシステムを作りやすいんだよ。
JWTは3つの部分から構成されています。それぞれがドット(.)で区切られており、以下のような構造になっています。
実際のJWTは次のような文字列になります。
一見するとランダムな文字列に見えますが、実は意味のある情報が含まれているのです。
トークンのタイプと使用するハッシュアルゴリズムを指定します。
実際のデータ(クレームと呼ばれる)が含まれます。ユーザーIDや権限情報などを格納します。
ヘッダーとペイロードを組み合わせて、秘密鍵でハッシュ化したものです。これにより、トークンが改ざんされていないことを検証できます。
JWTが広く使われる理由には、以下のようなメリットがあります。
ただし、これらのメリットと引き換えに、一度発行したトークンを無効化できないという課題も抱えています。この問題については後ほど詳しく解説します。
リンドくん
実際にJWTってどうやって使うんですか?ログインからAPIアクセスまでの流れを知りたいです。
たなべ
基本的な流れはシンプルだよ。
ログイン時にトークンを発行して、その後のリクエストでトークンを送信するだけなんだ。具体的に見ていこう。
JWT認証の典型的な流れは以下のようになります。
実際のコード例を見てみましょう。ここではNode.jsとExpressを使った例を紹介します。
発行したトークンを検証するミドルウェアの実装例です。
フロントエンド(JavaScript)でのトークンの使用例です。
このように、JWTを使った認証は比較的シンプルに実装できます。しかし、セキュリティを考慮すると、さらに多くの対策が必要になってきます。
次のセクションでは、JWTの課題とその対策について見ていきましょう。
リンドくん
あれ?でも、ユーザーがログアウトしたときって、トークンはどうなるんですか?
たなべ
それがJWTの大きな課題なんだ。
一度発行したトークンは、期限が切れるまで有効なままなんだよ。つまり、ログアウトボタンを押しても、技術的にはトークンは使えてしまうんだ。
JWTの最大の特徴である「ステートレス」は、同時に大きな課題でもあります。サーバー側でトークンの状態を管理していないため、以下のような問題が発生します。
実際にどのような問題が起こり得るか、具体例で見てみましょう。
あるユーザーの管理者権限を剥奪したとします。
「それなら、有効期限を短くすればいいのでは?」と思うかもしれません。確かにそれは一つの対策ですが、新たな問題を生みます。
これらの課題を解決するために、次のセクションで紹介する「ブラックリスト戦略」などの対策が必要になってくるのです。
リンドくん
じゃあ、どうやってトークンを無効化するんですか?何か方法があるんですよね?
たなべ
そこで登場するのがブラックリスト戦略だよ。無効化したいトークンをリストに登録して、検証時にそのリストをチェックするんだ。
ステートレスの利点は少し失われるけど、セキュリティとのトレードオフなんだよね。
ブラックリスト戦略は、無効化したいトークンのIDや識別情報をデータベースやキャッシュに保存し、トークン検証時にそのリストをチェックする方法です。
基本的な流れ
高速なアクセスが必要なブラックリストには、インメモリデータベースのRedisがよく使われます。
長所
短所
これはセキュリティと利便性のトレードオフです。システムの要件に応じて、適切なバランスを見極める必要があります。
リンドくん
ブラックリストを使うと毎回チェックが必要になりますよね?もっと効率的な方法はないんですか?
たなべ
いい着眼点だね!
実はリフレッシュトークンという仕組みを使うことで、セキュリティと利便性のバランスを取ることができるんだ。
リフレッシュトークン戦略では、以下の2種類のトークンを使い分けます。
アクセストークンの有効期限が短いため、以下のメリットがあります。
この戦略により、セキュリティと利便性の両立が可能になります。アクセストークンは短命なので、ブラックリストチェックなしでも比較的安全です。
一方、長命のリフレッシュトークンはデータベースで管理することで、確実に無効化できます。
リンドくん
JWTを使うときに、他にも気をつけることってありますか?
たなべ
もちろん!ブラックリストやリフレッシュトークンだけでは不十分なんだ。総合的なセキュリティ対策が必要だよ。
JWTを安全に使うためには、複数のセキュリティ対策を組み合わせることが重要です。
秘密鍵は以下の条件を満たすべきです。
JWTはBase64エンコードされているだけなので、平文通信では簡単に盗聴されます。
ペイロードは誰でも簡単にデコードできることを忘れないでください。
これにより、「noneアルゴリズム攻撃」などを防げます。
クライアント側でのトークン保存には、以下の選択肢があります。
localStorage
sessionStorage
HttpOnly Cookie
これらの対策を組み合わせることで、JWTを使った認証システムのセキュリティを大幅に向上させることができます。
リンドくん
JWTって奥が深いですね...でも、ちゃんと理解できた気がします!
たなべ
よく頑張ったね!
JWTは便利だけど、正しく理解して適切に実装することが何より重要なんだ。今日学んだことを実践してみてね。
JWT(JSON Web Token)は、現代のWeb開発において非常に重要な技術ですが、その特性を正しく理解せずに使うと深刻なセキュリティ問題を引き起こす可能性があります。
この記事で解説した重要なポイントをまとめます。
JWTは単なる「ログインの仕組み」以上のものです。それはWebセキュリティの根幹を成す技術であり、エンジニアとして成長していく上で避けて通れない重要なテーマです。
セキュリティは一度学んで終わりではなく、常に最新の脅威と対策を学び続ける必要がある分野です。
ぜひ継続的に学習を続けて、安全なWebアプリケーションを開発できるエンジニアを目指してください!