リンドくん
たなべ先生、C++を勉強してるんですが、「thisポインタ」って何ですか?なんだか難しそうで...
たなべ
thisポインタは最初は複雑に見えるけど、実は「自分自身を指す特別なポインタ」なんだよ。
RPGで例えると、キャラクターが「俺は〜」って自分のことを指すときの「俺」みたいなものかな。
C++のオブジェクト指向プログラミングを学んでいると、必ず出会うのが「thisポインタ」という概念です。
多くの初学者が「なぜこんなものが必要なの?」「どういう仕組みになっているの?」と疑問に思うのではないでしょうか?
thisポインタは、C++においてクラスのメンバ関数が「自分自身のオブジェクト」を参照するための特別な仕組みです。
この記事では、thisポインタの基本概念から実践的な使い方まで、図解とサンプルコードを使って初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
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リンドくん
そもそも、なぜ「自分自身を指すポインタ」が必要なんですか?
たなべ
実は、C++ではメンバ関数が呼び出されるとき、どのオブジェクトのメンバ関数なのかを識別する必要があるんだ。
同じクラスから作られた複数のオブジェクトがあるとき、「今、どのオブジェクトの関数が呼ばれているのか」を知るためにthisポインタが使われるんだよ。
thisポインタは、C++において各メンバ関数に自動的に渡される暗黙的なポインタです。
このポインタは、現在そのメンバ関数を呼び出しているオブジェクト自身のアドレスを指しています。
簡単に言うと、クラスのメンバ関数内で「この関数を呼び出したオブジェクト」を参照するためのポインタです。
同じクラスから複数のオブジェクトを作成した場合を考えてみましょう。
この例では、setName
関数が呼ばれたとき、どのオブジェクトのname
を変更すべきかを識別する必要があります。
thisポインタは、まさにこの問題を解決するために存在しているのです。
thisポインタにはいくつかの重要な特徴があります。
クラス名*
(そのクラスへのポインタ)const クラス名*
型になるこれらの特徴を理解することで、thisポインタがどのような場面で活用できるかが見えてきます。
まず、メモリ上でオブジェクトがどのように配置されるかを理解しましょう。
メモリ上では以下のように配置されます。
Rectangleオブジェクトのメモリ上の配置
メンバ関数が呼ばれるとき、実際には以下のような処理が内部で行われています。
つまり、setSize
関数内では以下のような状態になっています。
この仕組みにより、同じメンバ関数でもどのオブジェクトに対して操作を行うかが明確に区別されるのです。
thisポインタを使ったメンバアクセスは、実際には以下のようなメモリアクセスになります。
これにより、同じコードでも異なるオブジェクトに対して正確に操作を行うことができるのです。
リンドくん
thisポインタって、実際にはどんなときに使うんですか?
普通にメンバ変数に直接アクセスすればいいような気がするんですが...
たなべ
確かに多くの場合は直接アクセスで十分だね。
でも、メンバ変数と引数の名前が同じときや、オブジェクト自身を返したいときなど、thisポインタが必要不可欠な場面があるんだよ。
最もよく使われるケースが、セッター関数で引数名とメンバ変数名が同じ場合です。
このように、thisポインタを使うことでメンバ変数と引数を明確に区別できます。
オブジェクト自身を返すことで、メソッドを連続して呼び出せるパターンです。
一連の操作を直感的に記述できるため、コードの可読性が大幅に向上します。
代入演算子のオーバーロードで、自分自身への代入をチェックする場合です。
この自己代入チェックがないと、自分自身に代入したときにメモリが破壊される危険性があります。
リンドくん
thisポインタを使うときに気をつけることはありますか?
たなべ
いくつか重要な注意点があるよ。
特にstaticメンバ関数では使えないことと、不必要に使いすぎないことは覚えておいてほしいな。
staticメンバ関数は特定のオブジェクトに属さないため、thisポインタは使用できません。
thisポインタは必要な場面でのみ使用し、不必要に使いすぎないことが重要です。
thisポインタは通常のメンバ関数呼び出しでは必ず有効なアドレスを指すため、nullチェックは不要です。
リンドくん
thisポインタのこと、だいぶ理解できました!
特にメソッドチェーンの例が面白かったです。
たなべ
thisポインタはC++のオブジェクト指向プログラミングの根幹に関わる重要な概念なんだ。
これを理解することで、より柔軟で効率的なプログラムが書けるようになるよ。
今回は、C++のthisポインタについて基本概念から実践的な使用例まで詳しく解説してきました。
thisポインタは一見複雑に見えますが、その仕組みを理解すれば非常に強力なツールとなります。
重要なポイント
特にメソッドチェーンパターンは、モダンなC++プログラミングでよく使われる手法で、ライブラリ設計などで重要な役割を果たします。
thisポインタをマスターすることで、より読みやすく、保守性の高いC++コードが書けるようになります。ぜひ実際のプロジェクトで活用してみてください。