最終更新
リンドくん
先生、Webサイトって昔より速くなった気がするんですけど、何か理由があるんですか?
たなべ
いい気づきだね!Webの通信方法であるHTTPというプロトコルが進化してきたからなんだ。
HTTP/1.1から始まって、HTTP/2、HTTP/3と、どんどん高速化されてきたんだよ。
リンドくん
え、HTTPにもバージョンがあるんですか?全然知りませんでした...
たなべ
そうなんだ。今日はその違いを、初心者のリンドくんでもわかるように丁寧に説明していくよ。
この知識があると、なぜWebサイトが速く表示されるのかが理解できるようになるからね。
インターネットでWebサイトを見るとき、自分たちは何気なくブラウザを開いて情報を受け取っています。
しかし、その裏側ではHTTP(Hypertext Transfer Protocol)という通信のルールに従って、データのやり取りが行われているのです。
このHTTPは、時代とともに進化を続けてきました。
1997年に登場したHTTP/1.1から、2015年のHTTP/2、そして2022年に標準化されたHTTP/3まで、それぞれのバージョンには明確な目的と改善点があります。
この記事では、ネットワーク学習を始めたばかりの方でも理解できるよう、各HTTPバージョンの特徴や違いを段階的に解説していきます。
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リンドくん
先生、そもそもHTTPって何なんですか?
たなべ
HTTPはWebブラウザとWebサーバーがデータをやり取りするためのルールなんだ。
郵便のシステムに例えると分かりやすいかな。
HTTPとは「Hypertext Transfer Protocol(ハイパーテキスト転送プロトコル)」の略で、Webページを表示するための通信規約です。
私たちがブラウザでURLを入力したり、リンクをクリックしたりすると、以下のような流れでデータのやり取りが行われます。
この一連のやり取りを効率的に行うためのルールがHTTPなのです。
インターネットが普及し始めた1990年代と比べて、現代のWebサイトは格段に複雑になりました。
たとえば、以下のような変化があります。
こうした変化に対応するため、HTTPは進化を続けてきたのです。
リンドくん
最初のバージョンであるHTTP/1.1は、どんな仕組みだったんですか?
たなべ
HTTP/1.1は1つの通信路で1つずつデータを送るという、シンプルだけど非効率な方法だったんだ。
レストランで例えると、1つの料理が運ばれ終わってから次の料理を運ぶ感じだね。
HTTP/1.1は1997年に標準化され、長い間インターネット通信の主役として活躍してきました。
その基本的な特徴は以下の通りです。
特に、持続的接続の導入により、毎回接続を開き直す必要がなくなり、それまでのHTTP/1.0と比べて大きな改善となりました。
しかし、HTTP/1.1には深刻な問題がありました。それがHOL(Head-of-Line)ブロッキングという現象です。
これは、先頭のリクエストの処理が終わらないと、後続のリクエストが待たされてしまうという問題です。
たとえば、Webページに10個の画像があったとすると、以下のような流れになります。
このように、データの待ち時間が積み重なってしまうのです。
この問題を回避するため、開発者たちは以下のような工夫をしていました。
しかし、これらはあくまで応急処置的な対応であり、根本的な解決にはなりませんでした。
リンドくん
HTTP/2では、その問題が解決されたんですか?
たなべ
そうなんだ!HTTP/2では多重化(マルチプレキシング)という技術で、1つの接続で複数のデータを同時にやり取りできるようになったんだよ。
レストランで言えば、複数の料理を同時に運べるようになった感じだね。
2015年に標準化されたHTTP/2は、HTTP/1.1の問題点を大幅に改善しました。
主な特徴は以下の通りです。
1つのTCP接続内で複数のリクエストとレスポンスを並行処理できるようになりました。
これにより、HOLブロッキングの問題が大幅に軽減されました。
複数の画像を読み込む場合、HTTP/1.1では順番待ちが発生していましたが、HTTP/2では同時に複数の画像をリクエストし、受信できるようになったのです。
HTTP/1.1ではテキスト形式でデータをやり取りしていましたが、HTTP/2ではバイナリ形式に変更されました。
これにより、以下のメリットが生まれました。
Webページを表示する際、リクエストごとに同じような情報(Cookie、User-Agentなど)を毎回送っていました。
HTTP/2ではHPACKという技術により、これらのヘッダー情報を圧縮し、重複部分を省略できるようになりました。
サーバーが、クライアントがリクエストする前に必要なリソースを先回りして送信できる機能です。
たとえば、HTMLファイルをリクエストされたときに、「このページにはこのCSSファイルとこの画像が必要だな」と判断して、リクエストされる前に送ってしまうのです。
これらの改善により、HTTP/2では以下のような効果が得られました。
実際、GoogleやFacebookなどの大手サイトは早期にHTTP/2を導入し、大きな成果を上げています。
リンドくん
HTTP/2で完璧になったと思ったんですけど、HTTP/3も出たんですね。何が変わったんですか?
たなべ
実はHTTP/2にもTCPレベルでのHOLブロッキングという問題が残っていたんだ。
HTTP/3では、TCP自体を使うのをやめて、QUICという新しいプロトコルを採用したんだよ。
HTTP/2で多くの問題が解決されましたが、TCPというプロトコル自体の制約により、完全には解決できない問題がありました。
TCPでは、パケット(データの小包)が1つでも失われると、そのパケットを再送するまで後続のすべてのデータ処理が止まってしまうのです。
これが「TCPレベルのHOLブロッキング」です。
特にモバイル通信のように、通信が不安定な環境では、この問題が顕著に現れました。
HTTP/3では、この問題を根本から解決するため、QUIC(Quick UDP Internet Connections)という新しいプロトコルを採用しました。
QUICの主な特徴は以下の通りです。
従来のTCPではなく、UDP(User Datagram Protocol)という軽量なプロトコルの上に構築されています。
UDPは信頼性よりも速度を重視したプロトコルで、QUICはその上に独自の信頼性確保の仕組みを実装しています。
複数のストリーム(データの流れ)が完全に独立しています。
1つのストリームでパケットロスが発生しても、他のストリームは影響を受けません。
これにより、TCPレベルのHOLブロッキングが完全に解消されました。
TCPとTLS(暗号化)の接続確立には通常、複数回のやり取り(ラウンドトリップ)が必要でした。
QUICでは、接続と暗号化のハンドシェイクを1回で完了できるため、接続確立が非常に高速です。
さらに、一度接続したサーバーには0-RTT(ゼロラウンドトリップタイム)で再接続できる場合もあります。
モバイルデバイスでWi-Fiから4G/5Gに切り替わったとき、TCPでは接続が切れてしまいました。
QUICではConnection IDという仕組みにより、ネットワークが変わっても接続を維持できます。
これらの改善により、HTTP/3では以下のような効果が期待できます。
現在、GoogleやCloudflare、Facebookなどの主要サービスがHTTP/3を採用しており、今後さらに普及が進むと予想されています。
リンドくん
3つのバージョンの違いが少しずつ分かってきました!整理するとどんな感じですか?
たなべ
いいね、整理するのは大事だよ。表にまとめてみようか。
以下の表で、3つのHTTPバージョンの主な違いをまとめます。
| 特徴 | HTTP/1.1 | HTTP/2 | HTTP/3 |
|---|---|---|---|
| 標準化年 | 1997年 | 2015年 | 2022年 |
| 基盤プロトコル | TCP | TCP | QUIC(UDP) |
| データ形式 | テキスト | バイナリ | バイナリ |
| 多重化 | なし | あり | あり(独立) |
| ヘッダー圧縮 | なし | HPACK | QPACK |
| HOLブロッキング | あり(HTTP層) | あり(TCP層) | なし |
| 接続確立 | 遅い | 遅い | 非常に速い |
| サーバープッシュ | なし | あり | なし(削除) |
| 接続移行 | 不可 | 不可 | 可能 |
現代のWebサイトでは、基本的にHTTP/2以降の採用が推奨されます。
しかし、以下のような点を考慮する必要があります。
多くの場合、サーバー側で複数のバージョンに対応しておき、クライアントの能力に応じて自動的に最適なバージョンで通信する設定にします。
リンドくん
HTTPの進化って、本当に面白いですね!昔より速くなった理由がよく分かりました。
たなべ
そうだね!技術は常に進化しているんだ。
これからネットワークを学んでいくリンドくんにとって、こうした基礎知識はとても重要だよ。
この記事では、HTTP/1.1、HTTP/2、HTTP/3という3つのバージョンの違いについて解説してきました。
最後に、重要なポイントをまとめておきましょう。
HTTP/1.1
HTTP/2
HTTP/3
HTTPの進化は、単なる技術的な改善だけでなく、私たちのインターネット体験そのものを向上させています。
Webページの表示が速くなることで、ストレスが減り、情報へのアクセスがより快適になっています。
特にモバイルデバイスの普及により、不安定な通信環境でも快適に使えることの重要性が増しています。
今回学んだHTTPの進化は、ネットワーク技術全体の発展の一例に過ぎません。
ぜひこれを機に、さらに深くネットワークについて学んでいただければと思います。