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ロードバランサの種類を理解しよう!L4とL7の違いを初心者にもわかりやすく解説

リンドくん

リンドくん

たなべ先生、「ロードバランサ」って言葉をよく聞くんですけど、L4とかL7とか種類があるって本当ですか?

たなべ

たなべ

確かにロードバランサには種類があって、L4(レイヤー4)とL7(レイヤー7)が代表的なんだ。それぞれ動作する階層が違うから、できることも変わってくるんだよ。

Webサービスを運営していると、必ず直面するのが「アクセスが増えたときにどう対応するか」という課題です。
1台のサーバーで処理できる量には限界がありますし、万が一そのサーバーが故障したら、サービス全体が停止してしまいます。

そこで登場するのがロードバランサ(負荷分散装置)です。
複数のサーバーにアクセスを振り分けることで、システム全体の処理能力を高め、安定性も向上させることができます。

しかし、ロードバランサには「L4」と「L7」という2つの主要な種類があり、それぞれ特徴や使いどころが異なります。
この記事では、ネットワークを学び始めた方でも理解できるよう、ロードバランサの基礎から、L4とL7の違い、そして実際の使い分けまで、わかりやすく解説していきます。

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ロードバランサとは何か?その役割を理解しよう

リンドくん

リンドくん

そもそもロードバランサって、どういう役割を果たしているんですか?

たなべ

たなべ

簡単に言うと、たくさんのアクセスを複数のサーバーに分散させる装置なんだ。
例えば、お店のレジが1つだと行列ができちゃうけど、レジが3つあれば待ち時間が減るよね。ロードバランサはそういう役割を果たしているんだよ。

ロードバランサの基本的な役割

ロードバランサは、クライアント(ユーザー)からのリクエストを受け取り、複数のサーバーに振り分ける役割を担います。
これにより、以下のようなメリットが得られます。

  • 負荷分散 → 1台のサーバーに集中する負荷を複数のサーバーに分散し、処理能力を向上させる
  • 可用性の向上 → サーバーの1台が故障しても、他のサーバーが処理を継続できる
  • スケーラビリティ → サーバー台数を増やすことで、簡単に処理能力を拡張できる
  • メンテナンス性 → サーバーを順次メンテナンスしても、サービスを停止せずに済む

例えば、ECサイトでセールが始まると、一時的にアクセスが急増します。
このとき、ロードバランサがなければ、1台のサーバーに負荷が集中して応答が遅くなったり、最悪の場合はサーバーがダウンしてしまう可能性があります。

ロードバランサがあれば、3台のサーバーで負荷を分け合うことで、それぞれのサーバーの負担が1/3になり、快適にサービスを提供し続けることができるのです。

ロードバランサの配置場所

ロードバランサは通常、クライアントとWebサーバーの間に配置されます。

[クライアント] 
    ↓
[ロードバランサ]
    ↓
    ├── [Webサーバー1]
    ├── [Webサーバー2]
    └── [Webサーバー3]

この構成により、クライアントから見るとロードバランサが1つのサーバーのように見えますが、実際には裏側で複数のサーバーが連携して動作しています。

OSI参照モデルとレイヤーの基礎知識

リンドくん

リンドくん

L4とかL7って、何の略なんですか?

たなべ

たなべ

これはOSI参照モデルという、ネットワークの階層構造を表すモデルの「レイヤー(層)」を指しているんだ。
L4は「レイヤー4」、L7は「レイヤー7」という意味だよ。

OSI参照モデルとは

OSI参照モデルは、ネットワーク通信を7つの階層に分けて理解するための枠組みです。
下位層から順に以下のように定義されています。

  1. 物理層(Layer 1) → 電気信号やケーブルなど物理的な接続
  2. データリンク層(Layer 2) → 同じネットワーク内での通信(MACアドレス)
  3. ネットワーク層(Layer 3) → 異なるネットワーク間の通信(IPアドレス)
  4. トランスポート層(Layer 4) → 通信の信頼性確保(TCP/UDP、ポート番号)
  5. セッション層(Layer 5) → 通信セッションの管理
  6. プレゼンテーション層(Layer 6) → データ形式の変換
  7. アプリケーション層(Layer 7) → アプリケーションごとの処理(HTTP、FTPなど)

L4とL7の位置づけ

ロードバランサの種類を表す「L4」と「L7」は、このOSI参照モデルのどの階層で動作するかを示しています。

  • L4ロードバランサ → トランスポート層(Layer 4)で動作し、IPアドレスとポート番号を見て振り分け
  • L7ロードバランサ → アプリケーション層(Layer 7)で動作し、HTTPのヘッダーやURLなどの情報を見て振り分け

つまり、上位の層ほど詳細な情報を扱えるということです。
L4は基本的な情報だけで判断しますが、L7はアプリケーションの内容まで理解して判断できるのです。

L4ロードバランサの仕組みと特徴

リンドくん

リンドくん

L4ロードバランサって、具体的にどういう風に振り分けているんですか?

たなべ

たなべ

L4ロードバランサは、IPアドレスとポート番号という基本的な情報だけを見て判断するんだ。シンプルだからこそ、処理が速いというメリットがあるよ。

L4ロードバランサの動作原理

L4ロードバランサは、トランスポート層で動作し、以下の情報を使って振り分けを行います。

  • 送信元IPアドレス → クライアントのIPアドレス
  • 宛先IPアドレス → サーバーのIPアドレス
  • 送信元ポート番号 → クライアント側のポート
  • 宛先ポート番号 → サーバー側のポート(例:HTTPなら80番)
  • プロトコル → TCP or UDP

例えば、あるクライアントから「192.168.1.100:80」へのリクエストが来た場合、L4ロードバランサはこの情報をもとに、事前に設定されたアルゴリズムに従って振り分け先のサーバーを決定します。

L4ロードバランサの振り分けアルゴリズム

一般的な振り分け方法には以下のようなものがあります。

  • ラウンドロビン → 順番にサーバーへ振り分ける
  • 最小接続 → 現在の接続数が最も少ないサーバーへ振り分ける
  • 送信元IPハッシュ → クライアントのIPアドレスをもとに、常に同じサーバーへ振り分ける

L4ロードバランサのメリット

L4ロードバランサには以下のような利点があります。

  • 高速な処理 → パケットの内容を深く解析しないため、処理が軽量で高速
  • プロトコル非依存 → HTTP以外のプロトコル(SMTP、FTPなど)にも対応可能
  • 低コスト → シンプルな仕組みなので、導入コストが比較的安い
  • 高いスループット → 大量のリクエストを効率的に処理できる

L4ロードバランサのデメリット

一方で、以下のような制約もあります。

  • 柔軟性の欠如 → URLやHTTPヘッダーの内容に基づいた振り分けができない
  • セッション維持の難しさ → アプリケーションレベルの情報が見えないため、細かな制御が難しい

L4ロードバランサは、シンプルで高速な負荷分散が必要な場合に適していると言えます。

L7ロードバランサの仕組みと特徴

リンドくん

リンドくん

じゃあ、L7ロードバランサはどう違うんですか?

たなべ

たなべ

L7ロードバランサは、HTTPのヘッダーやURL、Cookieの内容まで見て判断できるんだ。つまり、もっと賢く、柔軟に振り分けができるということだよ。

L7ロードバランサの動作原理

L7ロードバランサは、アプリケーション層で動作し、HTTPやHTTPSなどのアプリケーションプロトコルの内容を解析して振り分けを行います。

具体的には、以下のような情報を活用できます。

  • URL/api/へのリクエストはAPIサーバーへ、/images/へのリクエストは画像サーバーへ
  • HTTPヘッダーUser-Agentを見てモバイル向けとPC向けで振り分け
  • Cookie → セッション情報を見て、同じユーザーを常に同じサーバーへ
  • リクエストメソッド → GET、POST、PUT、DELETEなどに応じて振り分け
  • コンテンツタイプ → 動画、画像、テキストなど、コンテンツの種類で振り分け

L7ロードバランサの振り分け例

例えば、以下のような振り分けが可能です。

https://example.com/api/users → APIサーバー群
https://example.com/images/   → 画像サーバー群
https://example.com/          → Webサーバー群

このように、URLのパスによって異なるサーバー群へ振り分けることができます。
これにより、それぞれの処理に最適化されたサーバー構成を実現できるのです。

L7ロードバランサのメリット

L7ロードバランサには以下のような強力な利点があります。

  • 高度な振り分けロジック → アプリケーションの内容に応じた柔軟な振り分けが可能
  • SSL終端 → ロードバランサでSSLを終端し、バックエンドサーバーの負荷を軽減
  • コンテンツベースのルーティング → URLやヘッダーに基づいた細かな制御
  • セッション維持 → Cookieやセッション情報を使った粘着性のある振り分け
  • セキュリティ機能 → WAF(Web Application Firewall)機能の統合が可能

L7ロードバランサのデメリット

高機能な分、以下のような課題もあります。

  • 処理負荷が高い → パケットの内容を詳しく解析するため、CPUリソースを多く消費
  • コストが高い → 高性能なハードウェアやソフトウェアライセンスが必要
  • レイテンシの増加 → 処理が複雑な分、わずかに応答時間が長くなる可能性

しかし、現代のWebサービスでは、柔軟性と高度な制御が求められるため、L7ロードバランサの採用が増えています。

L4とL7の違いを比較表で理解する

リンドくん

リンドくん

L4とL7の違いがだんだんわかってきました!でも、結局どっちを使えばいいんでしょうか?

たなべ

たなべ

それぞれの特徴を比較して、自分のシステムに何が必要かを考えることが大切だよ。表にまとめてみるとわかりやすいかもしれないね。

主要な違いの比較

項目L4ロードバランサL7ロードバランサ
動作層トランスポート層(Layer 4)アプリケーション層(Layer 7)
判断材料IPアドレス、ポート番号URL、HTTPヘッダー、Cookie
処理速度高速やや低速
柔軟性低い高い
対応プロトコルTCP/UDP全般主にHTTP/HTTPS
SSL終端不可可能
コンテンツベースルーティング不可可能
コスト比較的安価高価
用途例シンプルな負荷分散高度な振り分けが必要な場合

使い分けの判断基準

どちらを選ぶかは、以下のような基準で判断すると良いでしょう。

L4ロードバランサが適している場合

  • シンプルな負荷分散で十分
  • 処理速度を最優先したい
  • HTTP以外のプロトコルも扱いたい
  • コストを抑えたい

L7ロードバランサが適している場合

  • URLやヘッダーに基づいた振り分けが必要
  • SSL終端をロードバランサで行いたい
  • マイクロサービスアーキテクチャを採用している
  • WAFなどのセキュリティ機能が必要

実際には、L4とL7を組み合わせて使うこともあります。
例えば、外部からのアクセスはL7で受けて柔軟に振り分け、内部のサーバー間通信はL4で高速に処理する、といった構成です。

実際の利用シーン

リンドくん

リンドくん

実際のWebサービスでは、どんな風に使い分けているんですか?

たなべ

たなべ

具体的な例を見ると、もっとイメージしやすくなるよね。実際のシステム構成例を見ていこうか。

ケース① 小規模なWebサイト(L4を使用)

社内向けの小規模なWebアプリケーションの場合、シンプルな構成で十分です。

[クライアント]
    ↓
[L4ロードバランサ]
    ↓
    ├── [Webサーバー1]
    ├── [Webサーバー2]
    └── [Webサーバー3]

この構成では、L4ロードバランサがラウンドロビンで振り分けを行い、どのサーバーも同じ機能を提供します。
シンプルで高速、そして低コストという特徴があります。

ケース② 大規模ECサイト(L7を使用)

多様な機能を持つECサイトでは、L7ロードバランサの柔軟性が活きます。

[クライアント]
    ↓
[L7ロードバランサ]
    ↓
    ├── /api/*      → [APIサーバー群]
    ├── /images/*   → [画像サーバー群]
    ├── /static/*   → [静的コンテンツサーバー群]
    └── /*          → [Webサーバー群]

この構成により、以下のようなメリットが得られます。

  • APIサーバーは処理能力を重視したスペックに
  • 画像サーバーは大容量ストレージを搭載
  • 静的コンテンツはCDN連携で高速配信
  • 各サーバーの役割が明確で管理しやすい

ケース③ ハイブリッド構成(L4とL7の組み合わせ)

大規模なシステムでは、L4とL7を組み合わせることで、両方のメリットを活かせます。

[インターネット]
    ↓
[L4ロードバランサ(外部向け)]
    ↓
    ├── [L7ロードバランサA] → [Webサーバー群]
    └── [L7ロードバランサB] → [APIサーバー群]
        ↓
        └── [L4ロードバランサ(内部向け)]
            ↓
            ├── [DBサーバー1]
            └── [DBサーバー2]

この構成では、以下のような利点があります。

  • 外部との接続はL4で高速に処理
  • アプリケーション層ではL7で柔軟に振り分け
  • 内部のDB接続はL4でシンプルに負荷分散
  • 各層で最適な技術を選択できる

まとめ

リンドくん

リンドくん

ロードバランサの種類について、よく理解できました!L4とL7は、使う場面によって選ぶんですね。

たなべ

たなべ

その通り!システムの要件に合わせて適切なものを選ぶことが大切なんだ。最初はシンプルなL4から始めて、必要に応じてL7に移行するというアプローチもあるよ。

この記事では、ロードバランサの2つの主要な種類、L4とL7について解説してきました。
改めてポイントを整理しましょう。

  • ロードバランサは、複数のサーバーに負荷を分散し、可用性と拡張性を高める重要な装置
  • L4ロードバランサは、IPアドレスとポート番号で判断し、高速でシンプルな負荷分散を実現
  • L7ロードバランサは、URLやHTTPヘッダーなどの情報で判断し、柔軟で高度な振り分けが可能
  • L4は速度重視、L7は柔軟性重視というのが基本的な考え方
  • 実際のシステムでは、要件に応じて適切に選択したり組み合わせることが重要

ネットワークとインフラの知識は、実際に手を動かして試してみることで深まっていきます。
AWSのELB(Elastic Load Balancing)やGoogle CloudのCloud Load Balancingなど、クラウドサービスを使えば、実際にロードバランサを試すことも可能です。

ロードバランサの理解は、スケーラブルで信頼性の高いシステムを構築するための重要なステップです。
この記事をきっかけに、さらにネットワークとインフラの世界を深く学んでいってください!

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