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高速データ処理の新常識Python Polars入門!Pandasとの違いと使い方

リンドくん

リンドくん

たなべ先生、最近「Polars」っていうライブラリをよく聞くんですけど、これって何ですか?Pandasとは違うんですか?

たなべ

たなべ

Polarsは次世代のデータ処理ライブラリとして注目されているんだ。
Pandasよりもはるかに高速で、特に大きなデータを扱うときに威力を発揮するんだよ。

データ分析やデータサイエンスを学んでいる方なら、「Pandas」というライブラリの名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
Pythonでデータを扱う際の定番ライブラリとして、長年多くの開発者に愛用されてきました。

しかし近年、Pandasの代替として「Polars(ポーラーズ)」というライブラリが急速に注目を集めています
その最大の理由は、圧倒的な処理速度です。場合によってはPandasの10倍以上も高速に動作することがあり、特に大規模なデータを扱う現場で重宝されています。

この記事では、Pythonのデータ処理を学び始めた方でも理解できるよう、Polarsの基本から実践的な使い方までをわかりやすく解説していきます。

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Polarsとは?なぜ今注目されているのか

リンドくん

リンドくん

でも先生、Pandasで十分じゃないんですか?わざわざ新しいライブラリを学ぶ必要ってあるんでしょうか...

たなべ

たなべ

確かにそう思うよね。でも実際に大量のデータを処理する場面になると、Pandasでは時間がかかりすぎることがあるんだ。
Polarsなら同じ処理が数倍から数十倍も速く終わることがあるよ。

Polarsの基本概念

PolarsはRust言語で実装された高速データ処理ライブラリです。Pythonから簡単に使えるインターフェースを提供しながら、内部では高度に最適化された処理が行われています。

主な特徴として以下のような点があります。

  • 圧倒的な処理速度 - マルチスレッド処理により、複数のCPUコアを効率的に活用
  • メモリ効率の良さ - データを効率的に格納し、メモリ使用量を抑える
  • 遅延評価(Lazy Evaluation) - 処理を最適化してから実行する仕組み
  • 直感的なAPI - Pandasと似た書き方ができるため、学習コストが低い

なぜPolarsが必要なのか?

データ分析の現場では、以下のような課題に直面することがよくあります。

  1. 「処理に時間がかかりすぎる!」 - 数百万行のデータを処理すると、Pandasでは数分〜数十分かかることも
  2. 「メモリが足りない!」 - 大きなデータセットを読み込むとメモリ不足になる
  3. 「複雑な処理を書くのが大変」 - 効率的なコードを書くには高度な知識が必要

これらの問題を解決するのがPolarsなのです。
特にAIエンジニアやデータサイエンティストを目指す方にとって、大規模データを効率的に処理できるスキルは非常に重要です。

PandasとPolarsの違い

具体的な違いを表で見てみましょう。

項目PandasPolars
処理速度標準的非常に高速(5-10倍以上)
メモリ効率標準的効率的
マルチスレッド限定的フル活用
学習コスト低いやや低い(Pandas経験者なら容易)
エコシステム非常に豊富成長中

Pandasは長年の実績があり、ライブラリやツールとの連携が豊富です。
一方、Polarsは新しいライブラリながら、速度とメモリ効率で圧倒的な優位性を持っています。

Polarsの基本的な使い方

リンドくん

リンドくん

実際にPolarsを使うには、どうすればいいんですか?

たなべ

たなべ

まずはインストールから始めよう。とても簡単だよ!
その後、基本的なデータ操作を学んでいけば、すぐに使えるようになるんだ。

インストール方法

Polarsのインストールは非常に簡単です。pipコマンドを使って、次のように実行します。

pip install polars

これだけで、Polarsが使えるようになります。
追加で、Pandas互換の機能を使いたい場合は、以下のようにインストールすることもできます。

pip install polars[pandas]

データフレームの作成

Polarsの基本的なデータ構造はDataFrame(データフレーム)です。これはPandasと同じく、表形式のデータを扱うための構造です。

import polars as pl

# 辞書からDataFrameを作成
df = pl.DataFrame({
    "名前": ["田中", "佐藤", "鈴木", "高橋"],
    "年齢": [25, 30, 28, 35],
    "部署": ["営業", "開発", "営業", "開発"],
    "給与": [300000, 450000, 350000, 500000]
})

print(df)

実行結果

shape: (4, 4)
┌──────┬──────┬──────┬────────┐
│ 名前 ┆ 年齢 ┆ 部署 ┆ 給与   │
│ ---  ┆ ---  ┆ ---  ┆ ---    │
│ str  ┆ i64  ┆ str  ┆ i64    │
╞══════╪══════╪══════╪════════╡
│ 田中 ┆ 25   ┆ 営業 ┆ 300000 │
│ 佐藤 ┆ 30   ┆ 開発 ┆ 450000 │
│ 鈴木 ┆ 28   ┆ 営業 ┆ 350000 │
│ 高橋 ┆ 35   ┆ 開発 ┆ 500000 │
└──────┴──────┴──────┴────────┘

Pandasと似た書き方で、簡単にデータフレームを作成できることがわかりますね。

CSVファイルの読み込み

実際のデータ分析では、CSVファイルからデータを読み込むことが多いでしょう。
Polarsでは以下のように書きます。

# CSVファイルの読み込み
df = pl.read_csv("sales_data.csv")

# 最初の5行を表示
print(df.head())

この処理は、Pandasのpd.read_csv()と同じように使えますが、処理速度が圧倒的に速いのが特徴です。
特に数百万行を超えるような大きなファイルを読み込む際に、その差を実感できるでしょう。

基本的なデータ操作

データフレームの基本的な操作をいくつか見ていきましょう。

# データの概要を確認
print(df.describe())

# 特定の列を選択
ages = df["年齢"]
print(ages)

# 複数の列を選択
subset = df.select(["名前", "給与"])
print(subset)

# 条件でフィルタリング
high_salary = df.filter(pl.col("給与") > 400000)
print(high_salary)

# 新しい列を追加
df = df.with_columns(
    (pl.col("給与") * 1.1).alias("昇給後給与")
)
print(df)

これらの操作は、Pandasと似た感覚で書けますが、メソッドチェーンを使った書き方が推奨されています。
この書き方により、処理の流れがわかりやすくなり、Polarsの最適化エンジンも効果的に働きます。

データの集計と分析

リンドくん

リンドくん

データ分析でよく使う集計処理は、Polarsではどう書くんですか?

たなべ

たなべ

集計処理もとてもシンプルに書けるよ。しかもPandasより速く動くから、大きなデータでも安心なんだ。

グループごとの集計

データ分析では、カテゴリごとにデータを集計することがよくあります。
Polarsではgroup_by()メソッドを使って、簡潔に書くことができます。

# 部署ごとの平均給与を計算
dept_avg = df.group_by("部署").agg(
    pl.col("給与").mean().alias("平均給与"),
    pl.col("年齢").mean().alias("平均年齢"),
    pl.count().alias("人数")
)

print(dept_avg)

実行結果:

shape: (2, 4)
┌──────┬──────────┬────────────┬──────┐
│ 部署 ┆ 平均給与 ┆ 平均年齢   ┆ 人数 │
│ ---  ┆ ---      ┆ ---        ┆ ---  │
│ str  ┆ f64      ┆ f64        ┆ u32  │
╞══════╪══════════╪════════════╪══════╡
│ 営業 ┆ 325000.0 ┆ 26.5       ┆ 2    │
│ 開発 ┆ 475000.0 ┆ 32.5       ┆ 2    │
└──────┴──────────┴────────────┴──────┘

複数の集計を同時に実行

Polarsの強みの一つは、複数の集計処理を効率的に実行できることです。

# 複雑な集計処理の例
result = df.group_by("部署").agg([
    pl.col("給与").sum().alias("総給与"),
    pl.col("給与").mean().alias("平均給与"),
    pl.col("給与").max().alias("最高給与"),
    pl.col("給与").min().alias("最低給与"),
    pl.col("年齢").mean().alias("平均年齢")
])

print(result)

このように、一度に複数の統計量を計算できます。
Pandasでも同様のことはできますが、Polarsは処理を内部で最適化してくれるため、より高速に動作します。

ソートと並び替え

データを特定の列で並び替えることも頻繁に行う操作です。

# 給与の高い順に並び替え
sorted_df = df.sort("給与", descending=True)
print(sorted_df)

# 複数の列でソート(部署順、その中で給与の高い順)
sorted_df = df.sort(["部署", "給与"], descending=[False, True])
print(sorted_df)

Polarsの高度な機能 - Lazy Evaluation(遅延評価)

リンドくん

リンドくん

先生、「Lazy Evaluation」って何ですか?よく聞くんですけど...

たなべ

たなべ

これがPolarsの真骨頂なんだ!処理を実行する前に全体を最適化してくれる機能で、さらに高速化できるんだよ。

Lazy Evaluationとは

PolarsにはEager Mode(即時実行モード)Lazy Mode(遅延実行モード)の2つの実行モードがあります。

  • Eager Mode - 各操作を即座に実行する(これまで見てきた例)
  • Lazy Mode - 操作を記録しておき、最後に最適化して実行する

Lazy Modeを使うと、Polarsが処理全体を見渡して、不要な計算を省いたり、並列処理を最適化したりしてくれます。

Lazy Modeの使い方

Lazy Modeを使うには、lazy()メソッドまたはscan_csv()を使います。

# Lazy DataFrameの作成
lazy_df = pl.scan_csv("large_sales_data.csv")

# 処理を定義(まだ実行されない)
result = (
    lazy_df
    .filter(pl.col("売上金額") > 100000)
    .group_by("商品カテゴリ")
    .agg([
        pl.col("売上金額").sum().alias("総売上"),
        pl.col("売上金額").mean().alias("平均売上")
    ])
    .sort("総売上", descending=True)
)

# ここで初めて実行される
final_result = result.collect()
print(final_result)

このように、collect()を呼ぶまで実際の処理は行われません。
Polarsはcollect()が呼ばれた時点で、全体の処理を見渡して最適化を行います。

Lazy Modeのメリット

Lazy Modeを使うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 処理の最適化 - 不要な計算をスキップ
  • メモリ効率 - 必要なデータだけをメモリに読み込む
  • 並列処理の最適化 - CPUコアを効率的に活用
  • Streaming処理 - メモリに収まらないデータも扱える

特に大規模なデータを扱う際は、Lazy Modeを使うことで劇的に性能が向上することがあります。

PandasとPolarsの書き方比較

リンドくん

リンドくん

Pandasに慣れてるんですけど、Polarsに移行するのは大変ですか?

たなべ

たなべ

実は思ったより簡単だよ!基本的な考え方は似ているから、書き方の違いを理解すればすぐに使えるようになるんだ。

よく使う操作の比較

同じ処理をPandasとPolarsで書いた場合の比較を見てみましょう。

データの読み込み

# Pandas
import pandas as pd
df = pd.read_csv("data.csv")

# Polars (Eager)
import polars as pl
df = pl.read_csv("data.csv")

# Polars (Lazy)
df = pl.scan_csv("data.csv")

列の選択

# Pandas
result = df[["名前", "年齢"]]

# Polars
result = df.select(["名前", "年齢"])
# または
result = df.select([pl.col("名前"), pl.col("年齢")])

条件フィルタ

# Pandas
result = df[df["年齢"] > 30]

# Polars
result = df.filter(pl.col("年齢") > 30)

グループ集計

# Pandas
result = df.groupby("部署")["給与"].mean()

# Polars
result = df.group_by("部署").agg(
    pl.col("給与").mean()
)

メソッドチェーンの活用

Polarsでは、メソッドチェーンを使った書き方が推奨されています。
これにより、処理の流れが明確になり、最適化もしやすくなります。

# Pandasスタイル
df_filtered = df[df["年齢"] > 25]
df_selected = df_filtered[["名前", "給与"]]
df_sorted = df_selected.sort_values("給与", ascending=False)

# Polarsスタイル(メソッドチェーン)
result = (
    df
    .filter(pl.col("年齢") > 25)
    .select(["名前", "給与"])
    .sort("給与", descending=True)
)

Polarsのメソッドチェーンは、処理の流れが読みやすく、パイプライン的な処理を自然に表現できます。

Polarsを使う際の注意点とベストプラクティス

メモリに注意する

Polarsは高速ですが、データ全体をメモリに読み込む場合は、メモリサイズに注意が必要です。
Lazy Modeを使えば、必要な部分だけをメモリに読み込むことができます。

適切なデータ型を選ぶ

Polarsは型に厳格なので、適切なデータ型を選ぶことでメモリ効率と処理速度が向上します。

# データ型を指定して読み込み
df = pl.read_csv(
    "data.csv",
    dtypes={
        "商品ID": pl.Utf8,
        "価格": pl.Int32,
        "注文日": pl.Date
    }
)

Pandasとの相互変換

既存のコードとの互換性のため、PandasとPolarsは相互に変換できます。

# Polars → Pandas
pandas_df = polars_df.to_pandas()

# Pandas → Polars
polars_df = pl.from_pandas(pandas_df)

ただし、変換にはコストがかかるため、できるだけPolarsで処理を完結させることが推奨されます。

まとめ

リンドくん

リンドくん

Polarsって本当に便利ですね!早速使ってみたくなりました!

たなべ

たなべ

そう言ってもらえると嬉しいね!
データ分析の世界は日々進化しているから、新しいツールにも積極的に挑戦していこう。Polarsは特に大規模データを扱う場面で強力な味方になるよ。

今回は、Pythonの高速データ処理ライブラリ「Polars」について、基本から実践的な使い方まで解説してきました。

重要なポイントをおさらいしましょう。

  • Polarsは圧倒的な処理速度を誇り、大規模データの分析に最適
  • PandasとAPIが似ているため、学習コストは低い
  • Lazy Evaluationを活用することで、さらなる高速化が可能
  • メソッドチェーンを使った直感的な書き方ができる

データサイエンスやAI開発を目指す方にとって、効率的なデータ処理スキルは必須です。
Pandasも素晴らしいライブラリですが、Polarsを使いこなすことで、より大規模なデータを快適に扱えるようになります。

データ分析の技術は日々進化しています。
Polarsのような新しいツールを積極的に学ぶことで、より効率的で価値の高いデータ分析ができるエンジニアへと成長していけるでしょう。

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