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ScriptableObjectでデータ駆動設計を実現!Unity初心者向けガイド

リンドくん

リンドくん

たなべ先生、Unityでゲームを作ってるんですけど、敵キャラとかアイテムのパラメータをどう管理すればいいか迷ってます...

たなべ

たなべ

そういう時はScriptableObjectを使うと便利なんだ。
データを外部に切り出して管理できるから、コードを変更しなくてもゲームバランスを調整できるようになるよ。

リンドくん

リンドくん

ScriptableObject...?聞いたことはあるんですけど、難しそうで...

たなべ

たなべ

心配しないで!基本を理解すれば意外と簡単なんだ。
今日はデータ駆動設計という考え方と一緒に、ScriptableObjectの使い方をしっかり教えるね。

ゲーム開発を始めたばかりの方にとって、キャラクターやアイテムのデータ管理は意外と悩ましい問題ですよね。
「敵の体力を変更するたびにコードを書き換えるのは面倒...」「同じようなコードをいくつも書いてしまっている...」そんな経験はありませんか?

UnityにはScriptableObjectという強力な機能があり、これを使うことでデータ駆動設計(Data-Driven Design)という効率的な開発手法を実現できるのです。

この記事では、Unity初心者の方でも理解できるように、ScriptableObjectの基本概念から実践的な使い方まで、段階的に解説していきます。

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データ駆動設計とは?なぜScriptableObjectが必要なのか

リンドくん

リンドくん

先生、そもそも「データ駆動設計」って何ですか?

たなべ

たなべ

簡単に言うと、プログラムのロジック(処理)とデータ(設定値)を分離する考え方なんだ。
これができると、プログラマじゃない人でもゲームバランスを調整できるようになるんだよ。

データ駆動設計の基本概念

データ駆動設計とは、プログラムの動作を決定する値(データ)を、プログラムのロジック(処理コード)から分離して管理する設計手法です。

従来の方法では、以下のようにコード内に直接値を書き込んでいたのではないでしょうか?

// 悪い例:データがコードに埋め込まれている
public class Enemy : MonoBehaviour
{
    void Start()
    {
        int hp = 100;           // 体力
        int attackPower = 15;   // 攻撃力
        float moveSpeed = 3.5f; // 移動速度
    }
}

この方法には以下のような問題があります。

  • 値を変更するたびにコードを編集する必要がある → バグの原因になりやすい
  • 複数の敵キャラクターで同じコードをコピーすることになる → 保守性が低い
  • プログラマ以外の人が調整できない → チーム開発で非効率

データ駆動設計では、これらの値を外部データとして管理します。
Unityでこれを実現するための最適な手段がScriptableObjectなのです。

ScriptableObjectとは

ScriptableObjectは、Unityが提供するデータコンテナの一種で、以下のような特徴があります。

  • 再利用可能なデータアセットとして保存できる
  • メモリ効率が良い → 同じデータを複数のオブジェクトで共有できる
  • Inspectorから簡単に編集できる → プログラマ以外でも調整可能
  • シーンに配置する必要がない → プロジェクト内のどこからでもアクセス可能

例えば、RPGゲームで「スライム」「ゴブリン」「ドラゴン」といった複数の敵キャラクターがいる場合、それぞれのデータをScriptableObjectとして作成することで、以下のようなメリットが得られます。

  • 各敵のパラメータを個別のアセットファイルとして管理
  • コードを変更せずにパラメータ調整が可能
  • 新しい敵を追加する際も、新しいデータアセットを作るだけ

これこそが、データ駆動設計の真価なのです。

ScriptableObjectの基本的な作り方と使い方

リンドくん

リンドくん

実際にScriptableObjectってどうやって作るんですか?

たなべ

たなべ

とってもシンプルだよ!まずはデータの型を定義するスクリプトを作って、それをもとにアセットファイルを作成するんだ。順番に見ていこう。

ステップ① ScriptableObjectクラスの定義

まず、どんなデータを管理したいかを定義します。今回は敵キャラクターのデータを例に説明しますね。

using UnityEngine;

// CreateAssetMenuアトリビュートで、メニューから作成できるようにする
[CreateAssetMenu(fileName = "NewEnemyData", menuName = "Game Data/Enemy Data")]
public class EnemyData : ScriptableObject
{
    [Header("基本情報")]
    public string enemyName;      // 敵の名前
    public Sprite enemyIcon;      // 敵のアイコン画像
    
    [Header("ステータス")]
    public int maxHp;            // 最大体力
    public int attackPower;      // 攻撃力
    public float moveSpeed;      // 移動速度
    
    [Header("報酬")]
    public int expReward;        // 獲得経験値
    public int goldReward;       // 獲得ゴールド
}

このコードのポイントを解説します。

  • ScriptableObjectを継承 → これがScriptableObjectの基本形です
  • [CreateAssetMenu]アトリビュート → Unityエディタのメニューから簡単にアセットを作成できるようにします
  • [Header]アトリビュート → Inspectorでの見やすさ向上のため、セクション分けをします

ステップ② アセットファイルの作成

上記のスクリプトを保存したら、Unityエディタで以下の手順でアセットを作成します。

  1. Projectウィンドウで右クリック
  2. Create → Game Data → Enemy Dataを選択
  3. 作成されたアセットファイルに名前をつける(例:SlimeData

これで、データアセットが作成されました!

ステップ③ データの設定

作成したアセットファイルを選択すると、Inspectorにデータ入力欄が表示されます。
ここで各パラメータを設定していきましょう。

例えば「スライム」のデータは以下のように設定します。

  • Enemy Name: スライム
  • Max Hp: 50
  • Attack Power: 5
  • Move Speed: 2.0
  • Exp Reward: 10
  • Gold Reward: 5

同様に、「ゴブリン」や「ドラゴン」など、必要な敵キャラクター分のデータアセットを作成していきます。

ステップ④ ScriptableObjectを使用するコード

それでは、作成したデータを実際のゲームで使用する方法を見ていきましょう。

using UnityEngine;

public class Enemy : MonoBehaviour
{
    // Inspectorからデータアセットを設定
    [SerializeField] private EnemyData enemyData;
    
    private int currentHp;
    
    void Start()
    {
        // データアセットから値を取得
        currentHp = enemyData.maxHp;
        
        Debug.Log($"{enemyData.enemyName}が出現!");
        Debug.Log($"HP: {currentHp}, 攻撃力: {enemyData.attackPower}");
    }
    
    // ダメージを受ける処理
    public void TakeDamage(int damage)
    {
        currentHp -= damage;
        Debug.Log($"{enemyData.enemyName}に{damage}のダメージ!残りHP: {currentHp}");
        
        if (currentHp <= 0)
        {
            Die();
        }
    }
    
    // 倒された時の処理
    void Die()
    {
        Debug.Log($"{enemyData.enemyName}を倒した!");
        Debug.Log($"経験値{enemyData.expReward}、ゴールド{enemyData.goldReward}を獲得!");
        Destroy(gameObject);
    }
}

このコードのポイントは以下です。

  • enemyDataフィールド → Inspectorから使用したいデータアセットを設定します
  • データの参照enemyData.maxHpのようにドット記法でデータにアクセスします
  • コードの再利用 → 同じEnemyスクリプトを、異なるデータアセットを設定することで使い回せます

これで、コードを一切変更せずに、データアセットを変更するだけで敵の性質を変えられるようになりました!

ScriptableObjectのベストプラクティスと注意点

リンドくん

リンドくん

便利そうですけど、何か気をつけることはありますか?

たなべ

たなべ

いくつか大事なポイントがあるんだ。特に実行時の変更については注意が必要だよ。

実行時の変更に関する注意

ScriptableObjectを使う際の最も重要な注意点は、実行中に値を変更すると、その変更がエディタ上のアセットに反映されてしまうということです。

// 注意が必要な例
public class BadExample : MonoBehaviour
{
    [SerializeField] private EnemyData enemyData;
    
    void Start()
    {
        // これはNG!元のアセットが変更されてしまう
        enemyData.maxHp = 999;
    }
}

この問題を解決するには、以下のような方法があります。

方法① 値をコピーして使用する

public class GoodExample : MonoBehaviour
{
    [SerializeField] private EnemyData enemyData;
    
    private int currentHp;  // コピーした値を使用
    
    void Start()
    {
        // 値をコピーして使用
        currentHp = enemyData.maxHp;
        
        // これなら安全に変更できる
        currentHp = 999;
    }
}

方法② Cloneを作成する

public class BetterExample : MonoBehaviour
{
    [SerializeField] private EnemyData enemyDataOriginal;
    
    private EnemyData enemyDataInstance;
    
    void Start()
    {
        // ScriptableObjectのコピーを作成
        enemyDataInstance = Instantiate(enemyDataOriginal);
        
        // コピーなら安全に変更できる
        enemyDataInstance.maxHp = 999;
    }
}

フォルダ構成のベストプラクティス

プロジェクトが大きくなってきたら、データアセットの整理が重要になります。
おすすめのフォルダ構成は以下です。

Assets/
├── ScriptableObjects/
│   ├── Scripts/           # ScriptableObjectの定義スクリプト
│   │   ├── EnemyData.cs
│   │   ├── WeaponData.cs
│   │   └── ItemData.cs
│   └── Data/              # 作成したアセットファイル
│       ├── Enemies/
│       │   ├── SlimeData.asset
│       │   ├── GoblinData.asset
│       │   └── DragonData.asset
│       ├── Weapons/
│       │   ├── SwordData.asset
│       │   ├── AxeData.asset
│       │   └── BowData.asset
│       └── Items/
│           ├── HealthPotionData.asset
│           └── ManaPotion Data.asset

命名規則の統一

データアセットには一貫した命名規則を使用しましょう。

  • ScriptableObjectクラス: ~Dataで終わる(例:EnemyData
  • アセットファイル: ~Data.assetで終わる(例:SlimeData.asset
  • わかりやすく具体的な名前: Enemy1ではなくSlimeData

パフォーマンスの最適化

ScriptableObjectはメモリ効率に優れていますが、以下の点に注意しましょう。

  • 大量のデータを含める場合: Listやディクショナリを使用する際は、適切なサイズに抑える
  • テクスチャやメッシュ: 直接含めるのではなく、参照として持つ
  • ロード戦略: 必要なデータだけをロードする設計にする

まとめ

リンドくん

リンドくん

ScriptableObject、思ってたより簡単で便利ですね!早速使ってみます!

たなべ

たなべ

その意気だね!最初は小さなデータから始めて、徐々に活用範囲を広げていくといいよ。
データとロジックの分離を意識することで、プログラミングスキルも確実に向上するからね。

今回は、UnityのScriptableObjectを使ったデータ駆動設計について解説してきました。
ScriptableObjectの主なメリットを整理してみましょう。

  • データとロジックの分離 → コードを変更せずにゲームバランス調整が可能
  • 再利用性の向上 → 同じコードで異なるデータを扱える
  • メモリ効率 → 複数のオブジェクトでデータを共有できる
  • チーム開発の効率化 → プログラマ以外でもデータ編集が可能

実装時の注意点は以下です。

  • 実行時の変更には注意し、必要に応じて値をコピーする
  • フォルダ構成を整理し、データアセットを管理しやすくする
  • 命名規則を統一して、チーム内での理解を促進する

データ駆動設計は、単なる便利な機能ではありません。
それはプロフェッショナルなゲーム開発の基本的な考え方なのです。この考え方を身につけることで、あなたのゲーム開発スキルは確実に次のレベルへと進むでしょう。

最初は小規模なプロジェクトで試してみて、徐々に活用範囲を広げていくことをおすすめします。
敵データ、武器データ、アイテムデータなど、様々な要素をScriptableObjectで管理することで、開発効率が劇的に向上します。

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