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生成AIのプロンプト設計入門!書き方で性能が変わる理由を初心者向けに解説

リンドくん

リンドくん

たなべ先生、最近ChatGPTとか使ってるんですけど、同じ質問でも聞き方によって全然違う答えが返ってくるんです。なんでなんですか?

たなべ

たなべ

いい気づきだね!実は生成AIって、指示の出し方(プロンプト)によって性能が大きく変わるんだ。
これは単なる「コツ」じゃなくて、AIの仕組みそのものに関わる重要なポイントなんだよ。

プログラミングを学んでいる方なら、ChatGPTやClaude、Copilotなどの生成AIツールを使ったことがあるのではないでしょうか?
コードの生成やデバッグのサポート、学習の補助など、AIは今や開発者にとって欠かせない存在になりつつあります。

しかし、同じ質問をしても「すごく的確な答えが返ってくるとき」と「なんだか的外れな答えが返ってくるとき」があると感じたことはありませんか?

実は、この差を生み出しているのがプロンプト設計です。プロンプトとは、AIに対する指示や質問のこと。このプロンプトの書き方次第で、AIの回答品質は驚くほど変わります。

この記事では、生成AIにおけるプロンプト設計の基本原理について、プログラミング学習者の視点からわかりやすく解説していきます。

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プロンプトとは何か?生成AIとの対話の本質

リンドくん

リンドくん

そもそも「プロンプト」って何なんですか?ただの質問文じゃないんですか?

たなべ

たなべ

確かに質問文でもあるんだけど、実はAIに対する「設計図」のようなものなんだ。
人間同士の会話と違って、AIには文脈を理解する能力に限界があるから、明確な指示が必要なんだよ。

プロンプトの定義

プロンプト(Prompt)とは、生成AIに入力するテキストのことで、AIに何をしてほしいかを伝えるための指示書です。単なる質問文以上の役割を持っています。

例えば、以下の2つのプロンプトを比較してみましょう。

プロンプトA(曖昧な指示)
Pythonのコードを書いて
プロンプトB(明確な指示)
Pythonで、1から100までの整数の中から素数だけを抽出して
リストとして返す関数を書いてください。
関数名はfind_primes()とし、コメントも含めてください。

プロンプトAは非常に曖昧で、AIは何のコードを書けばいいのか判断できません。一方、プロンプトBは具体的な要件が明確に示されているため、AIは期待される出力を正確に生成できます。

生成AIがプロンプトを処理する仕組み

生成AIは、入力されたプロンプトをトークンという単位に分解し、それぞれのトークンの関係性を統計的に分析して次に来るべき単語を予測していきます。

これは、「確率に基づいた次の単語予測」の連続によって文章を生成する仕組みです。つまり、AIは本当の意味で「理解」しているわけではなく、膨大な学習データから学んだパターンに基づいて、最も適切と思われる応答を生成しているのです。

この仕組みを理解すると、なぜプロンプトの書き方が重要なのかが見えてきます。AIにとって、プロンプトは「どのようなパターンで応答すべきか」を決定する唯一の手がかりなのです。

プロンプトが持つ3つの役割

プロンプトには主に以下の3つの役割があります。

  1. コンテキストの提供 - AIに必要な背景情報や文脈を伝える
  2. タスクの明確化 - 何をしてほしいのかを具体的に指示する
  3. 出力形式の指定 - どのような形式で答えてほしいかを示す

例えば、プログラミング学習において「Pythonの関数について教えて」と聞くのと、「プログラミング初心者向けに、Pythonの関数の基本概念を、具体的なコード例を3つ含めて500文字程度で説明してください」と聞くのでは、得られる回答の質が大きく異なります。

後者のプロンプトでは、対象読者(初心者)、求める内容(基本概念)、含めるべき要素(コード例3つ)、文字数(500文字程度)が明確に指定されているため、AIはより的確な応答を生成できるのです。

なぜプロンプトの書き方で性能が変わるのか

リンドくん

リンドくん

でも、人間なら多少曖昧でも意図を汲み取ってくれますよね。AIはなんでそれができないんですか?

たなべ

たなべ

いい質問だね!人間は経験や常識から文脈を補完できるけど、AIは与えられたテキスト情報だけを頼りにしているんだ。だから、明示的に伝えないと伝わらないんだよ。

AIの統計的予測モデルの特性

生成AIは、大規模な言語モデル(Large Language Model: LLM)と呼ばれる技術に基づいています。これは膨大なテキストデータから学習した統計的なパターンを使って、次に来る単語を予測する仕組みです。

重要なのは、AIは「理解」ではなく「パターンマッチング」を行っているという点です。例えば、「Pythonでリストを」という入力があると、学習データから「ソートする」「作成する」「操作する」などの続きが統計的に多いことを学んでいるため、それらの選択肢から最も適切なものを選びます。

このため、プロンプトが曖昧だと、AIはどのパターンを適用すべきか判断できず、意図しない方向に回答が進んでしまうのです。

コンテキストウィンドウの制約

生成AIには「コンテキストウィンドウ」と呼ばれる、一度に処理できる情報量の上限があります。現在の主要なAIモデルでは、数千から数万トークン程度の情報を同時に扱えますが、それを超える情報は「忘れて」しまいます。

そのため、プロンプト内で必要な情報を効率的に伝えることが重要です。冗長な表現や不要な情報を含めると、本当に重要な指示が埋もれてしまい、期待した出力が得られなくなります。

学習データの偏り

AIは学習データに含まれるパターンしか再現できません。もし学習データに特定の分野の情報が少なければ、その分野についての回答精度は低くなります。

しかし、適切なプロンプトで文脈を補完することで、この制約をある程度克服できるのです。例えば、「最新のPython 3.12の機能について」と指定することで、AIは学習データの中から関連性の高い情報を優先的に引き出すことができます。

指示の明確性と出力の質の関係

実験的に確認されていることとして、プロンプトの明確性と出力品質には強い相関関係があります。

曖昧なプロンプトの例

コードを改善して

この指示では、何をどう改善すればいいのかがわかりません。

明確なプロンプトの例

以下のPythonコードについて、
1. 可読性を向上させるため、変数名を意味のあるものに変更する
2. コメントを追加して各処理の目的を明確にする
3. エラーハンドリングを追加する
という3つの観点から改善してください。

[コードを貼り付け]

このように、何をどのようになぜを明確に伝えることで、AIは期待される出力を正確に生成できるようになります。

効果的なプロンプト設計の5つの基本原則

リンドくん

リンドくん

なるほど...じゃあ、どうやってプロンプトを書けばいいんですか?何かコツがあるんですか?

たなべ

たなべ

もちろん!プロンプト設計にはいくつかの基本原則があるんだ。
これを知っておくだけで、AIの性能を格段に引き出せるようになるよ。

原則① 明確性(Clarity) - 曖昧さを排除する

最も重要な原則は明確性です。AIは文脈を推測する能力が限られているため、指示は可能な限り具体的である必要があります。

悪い例

関数を作って

良い例

Pythonで、2つの整数を引数として受け取り、
その合計を返す関数add_numbers()を作成してください。
型ヒントとdocstringも含めてください。

明確性を高めるポイントは以下です。

  • 5W1Hを意識する - 誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように
  • 専門用語を適切に使う - 曖昧な表現より、正確な技術用語を使う
  • 数値や具体例を含める - 「たくさん」ではなく「3つ」のように具体的に

原則② 文脈提供(Context) - 必要な背景情報を伝える

AIに適切な回答をさせるには、十分な文脈情報が必要です。特にプログラミングでは、使用している環境や前提条件が重要になります。

文脈が不足している例

このエラーを直して
[エラーメッセージ]

文脈を含めた例

Python 3.11の環境で、Flaskを使ったWebアプリケーションを
開発しています。以下のエラーメッセージが表示されました。
プロジェクト構造とコードの該当部分も含めますので、
原因と解決方法を教えてください。

[プロジェクト構造]
[コード]
[エラーメッセージ]

文脈提供のポイントは以下です。

  • 技術スタックを明示する(言語のバージョン、フレームワークなど)
  • 目的を説明する(何を実現しようとしているか)
  • 制約条件を伝える(使えるライブラリ、パフォーマンス要件など)

原則③ 構造化(Structure) - 情報を整理して伝える

プロンプトを構造化することで、AIは情報を正しく解釈しやすくなります。

構造化されていない例

Webアプリを作りたいんだけどユーザー認証とデータベース接続が
必要でReactとNode.jsを使って認証はJWTでお願いします

構造化された例

以下の要件でWebアプリケーションの構成を提案してください。

【技術スタック】
- フロントエンド: React
- バックエンド: Node.js + Express

【必要な機能】
1. ユーザー認証(JWT使用)
2. データベース接続
3. RESTful API

【質問】
推奨されるプロジェクト構造とセキュリティのベストプラクティスを教えてください。

構造化のテクニックは以下です。

  • 箇条書きやナンバリングを使う
  • セクション分けで情報をグループ化する
  • マークダウン記法を活用する

原則④ 例示(Examples) - 期待する出力のサンプルを示す

具体的な例を示すことで、AIは期待される出力形式を理解しやすくなります。これは「Few-shot Learning(少数ショット学習)」と呼ばれるテクニックです。

例示なしのプロンプト

Pythonの関数のドキュメントを書いて

例示を含むプロンプト

以下の例のような形式で、add_numbers関数のdocstringを書いてください。

例)
def multiply(a: int, b: int) -> int:
    """
    2つの整数を乗算します。
    
    Args:
        a (int): 1つ目の整数
        b (int): 2つ目の整数
    
    Returns:
        int: aとbの積
    
    Examples:
        >>> multiply(3, 4)
        12
    """
    return a * b

対象の関数)
def add_numbers(a: int, b: int) -> int:
    return a + b

例示のポイントは以下です。

  • 実際に期待する出力に近い例を示す
  • 複数の例を示すことでパターンを理解させる
  • 良い例と悪い例を対比させることもできる

原則⑤ 反復改善(Iteration) - 段階的に精度を上げる

一度のプロンプトで完璧な結果を得られることは稀です。対話を通じて段階的に精度を上げていくことが重要です。

一段階目のプロンプト

Pythonでテキストファイルを読み込むコードを書いてください

フィードバック後の二段階目

先ほどのコードに以下の改善を加えてください。
1. ファイルが存在しない場合のエラーハンドリング
2. エンコーディング指定(UTF-8)
3. withステートメントを使ったリソース管理

反復改善のコツは以下です。

  • まず大枠を確認してから細部を詰める
  • 具体的なフィードバックを与える
  • なぜ改善が必要かを説明する

これら5つの原則を組み合わせることで、AIの性能を最大限に引き出すプロンプトが作成できます。

プログラミング学習におけるプロンプト活用

リンドくん

リンドくん

なるほど...でも、実際のプログラミング学習ではどう使えばいいんですか?

たなべ

たなべ

いい質問だね!実践例をいくつか見ていこう。
学習の各段階で効果的なプロンプトの書き方があるんだよ。

コード理解のためのプロンプト

既存のコードを理解したいときのプロンプト例です。

以下のPythonコードについて、プログラミング初心者向けに説明してください。

【説明してほしい内容】
1. このコードが何をしているのか(目的)
2. 各行の処理内容
3. 使われている主要な概念(リスト内包表記など)
4. 実行結果の例

【対象コード】
numbers = [x**2 for x in range(10) if x % 2 == 0]
print(numbers)

このプロンプトでは、対象読者(初心者)説明の範囲具体的に知りたいことが明確に示されているため、学習に適した詳しい説明が得られます。

エラー解決のためのプロンプト

エラーに遭遇したときの効果的なプロンプトです。

Python 3.13で以下のコードを実行したところ、エラーが発生しました。

【環境情報】
- OS: Windows 11
- Python: 3.13
- 使用ライブラリ: requests 2.31.0

【実行したコード】
import requests
response = requests.get('https://api.example.com/data')
data = response.json()
print(data['users'][0]['name'])

【エラーメッセージ】
KeyError: 'users'

【質問】
1. このエラーの原因は何ですか?
2. どのように修正すればよいですか?
3. 今後同様のエラーを防ぐためのベストプラクティスを教えてください。

このように、環境情報コードエラーメッセージ具体的な質問を含めることで、的確な解決策が得られます。

コード改善のためのプロンプト

自分が書いたコードをレビューしてもらうプロンプトです。

以下のPythonコードをプロの視点でレビューしてください。

【レビュー観点】
1. コードの可読性
2. パフォーマンス
3. Pythonらしい書き方(Pythonic)
4. エラーハンドリング
5. セキュリティ

【対象コード】
def calc_avg(nums):
    sum = 0
    for i in range(len(nums)):
        sum = sum + nums[i]
    return sum / len(nums)

【期待する出力】
- 改善点の指摘
- 改善後のコード例
- なぜその改善が必要かの説明

このプロンプトでは、レビューの観点を明示することで、学習に役立つ包括的なフィードバックが得られます。

学習計画作成のためのプロンプト

学習の方向性を決めるためのプロンプトです。

Webアプリケーション開発を学びたい初心者です。
以下の条件で、3ヶ月間の学習計画を作成してください。

【現在のスキル】
- Python基礎: 理解済み
- HTML/CSS: 基本的な構造は理解
- JavaScript: 未経験
- データベース: 未経験

【学習目標】
簡単なブログシステムを作れるようになる

【利用可能な学習時間】
平日: 2時間/日
休日: 5時間/日

【質問】
1. 学習する順番(ロードマップ)
2. 各週で学ぶべき具体的なトピック
3. 実践的なプロジェクト例
4. 推奨される学習リソース

このように、現状目標制約条件を明確にすることで、実現可能な学習計画が提案されます。

これらの実践例からわかるように、プログラミング学習においては、自分が何を知りたいのか、どんな助けが必要なのかを明確にすることが、AIを効果的に活用する鍵となります。

プロンプトエンジニアリングの落とし穴と注意点

リンドくん

リンドくん

プロンプトを工夫すればAIは何でもできるんですか?何か注意すべきことはありますか?

たなべ

たなべ

いや、実はAIにも限界があるんだ。プロンプトを工夫しても解決できないこともあるし、逆にAIに頼りすぎる危険性もあるんだよ。

AIの限界を理解する

どれだけ優れたプロンプトを書いても、AIには以下のような限界があります。

最新情報への対応

  • AIの学習データには期限があり、それ以降の情報は知りません
  • 例えば、最新のライブラリの機能や、直近のセキュリティ脆弱性については不正確な情報を提供する可能性があります

複雑な論理的推論

  • AIは統計的なパターンマッチングであり、真の意味での「理解」や「推論」はできません
  • 特に複雑なアルゴリズムの設計や、創造的な問題解決では人間の判断が必要です

コンテキストの保持

  • 長い対話では初期の情報を「忘れる」ことがあります
  • 重要な情報は繰り返し参照する必要があります

過度な依存を避ける

AIは強力な学習ツールですが、自分で考える力を奪ってはいけません

良い使い方

  • コードの動作原理を理解するための補助
  • 複数の実装方法の比較検討
  • デバッグの手がかりを得る

避けるべき使い方

  • 理解せずにコードをコピー&ペースト
  • 全ての問題をAIに丸投げ
  • エラーの原因を自分で考えずにAIに聞く

プログラミング学習において、試行錯誤のプロセス自体が重要な学びです。AIはそのプロセスを効率化するツールであって、置き換えるものではありません。

セキュリティとプライバシーの考慮

プロンプトに機密情報を含めることは避けるべきです。

含めてはいけない情報

  • APIキーやパスワード
  • 個人情報
  • 企業の機密コード

多くのAIサービスは、入力されたプロンプトを学習に利用する可能性があります。実際の開発では、この点に十分注意する必要があります。

出力の検証は必須

AIの出力は必ず自分で検証する習慣をつけましょう。

検証のポイント

  • コードを実際に実行して動作確認する
  • セキュリティの観点でレビューする
  • 公式ドキュメントと照らし合わせる
  • パフォーマンスを確認する

AIが提案するコードは、動くことと、良いコードであることは別です。特にプログラミング学習者は、AIの出力を盲信せず、なぜそのコードが良いのか(または悪いのか)を理解することが重要です。

バイアスと不正確性への警戒

AIは学習データに含まれるバイアスを反映する可能性があります。

注意すべき点

  • 古い情報や非推奨の方法を提案することがある
  • 特定のライブラリや手法に偏った提案をすることがある
  • 文化的・社会的なバイアスが含まれる可能性がある

これらの落とし穴を理解した上で、AIを賢く活用することが、現代のプログラミング学習者に求められるスキルです。

まとめ

リンドくん

リンドくん

プロンプト設計って、思ってた以上に奥が深いんですね!

たなべ

たなべ

そうなんだ。でも、これは新しい時代のコミュニケーションスキルとして、プログラマにとって必須の能力になっていくと思うよ。
AIと上手に協力しながら、自分のスキルも磨いていこう!

この記事では、生成AIにおけるプロンプト設計の原理について解説してきました。重要なポイントをまとめましょう。

  1. 明確性 - 曖昧さを排除し、具体的に指示する
  2. 文脈提供 - 必要な背景情報を含める
  3. 構造化 - 情報を整理して伝える
  4. 例示 - 期待する出力のサンプルを示す
  5. 反復改善 - 対話を通じて段階的に精度を上げる

これらの原則に従うことで、AIの性能を最大限に引き出し、プログラミング学習を効率化できます。

AIは強力なツールですが、あなたの思考を代替するものではありません
AIを使って効率化できる部分は積極的に活用しつつ、プログラミングの本質的な理解や問題解決能力は、自分自身で磨いていく必要があります。

プロンプト設計のスキルは、一朝一夕には身につきません。日々AIと対話しながら、どのような指示が効果的だったか、どこが改善できるかを振り返る習慣をつけましょう。

最初は完璧なプロンプトを書こうとしなくて大丈夫です。まずは明確に伝えることを意識し、AIの応答を見ながら少しずつ改善していきましょう。
その試行錯誤のプロセス自体が、あなたのスキルを確実に向上させます。

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