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【入門】AIエージェントとは?LLMとの違いを初心者にもわかりやすく解説

リンドくん

リンドくん

たなべ先生、最近「AIエージェント」ってよく聞くんですけど、普通のChatGPTと何が違うんですか?

たなべ

たなべ

確かに最近よく聞く言葉だよね。
実は単にLLMを呼び出すだけのものと、本当のエージェントには大きな違いがあるんだ。今日はその境界線をしっかり理解していこう!

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「エージェント」という言葉が溢れる現代

生成AIの世界では、最近「エージェント」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。
「AIエージェント」「自律エージェント」「マルチエージェント」など、様々な形で使われています。

しかし、この「エージェント」という言葉、実は非常に曖昧に使われているのが現状です。
単にChatGPTのAPIを1回呼び出すだけのプログラムも「エージェント」と呼ばれることがありますし、複雑なタスクを自律的に遂行するシステムも同じく「エージェント」と呼ばれています。

この記事では、エージェントとは本質的に何なのか、そして単なるLLM呼び出しとの境界線はどこにあるのかについて、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

生成AIを使ったアプリケーション開発に興味がある方、AIエージェントという概念をしっかり理解したい方は、ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

エージェントの定義と本質

リンドくん

リンドくん

そもそも「エージェント」って、どういう意味なんですか?

たなべ

たなべ

エージェント(Agent)は英語で「代理人」という意味なんだ。
つまり、人間の代わりに何かを実行してくれる存在ということだね。

エージェントの基本概念

AIの文脈における「エージェント」とは、環境を認識し、目標達成のために自律的に行動するシステムを指します。
もう少し具体的に言うと、以下のような特徴を持つシステムです。

  • 自律性 - 人間の介入なしに独立して動作する
  • 反応性 - 環境の変化を認識し、適切に対応する
  • 能動性 - 目標達成のために自発的に行動する
  • 社会性 - 他のエージェントや人間とコミュニケーションできる

この定義は、実は生成AI以前からAI研究の分野で使われてきた古典的なものです。
ただし、大規模言語モデル(LLM)の登場により、この概念が一気に実用的なものになったのです。

LLMとエージェントの関係

LLM(Large Language Model)は、大量のテキストデータで学習された言語モデルです。
ChatGPTやClaude、Geminiなどがその代表例ですね。

重要なポイントは、LLMはエージェントの「頭脳」部分だということです。
LLM単体では以下のような制限があります。

  • 外部のツールを使えない
  • 複数のステップを自分で判断して実行できない
  • 最新の情報にアクセスできない
  • ファイルを保存したり、メールを送ったりできない

エージェントは、このLLMに「手足」や「道具」を与えて、実際に様々なタスクを遂行できるようにしたものと考えることができます。

単なるLLM呼び出しとエージェントの境界線

リンドくん

リンドくん

じゃあ、ChatGPTのAPIを使ってプログラムを作ったら、それはエージェントになるんですか?

たなべ

たなべ

それだけではまだ「エージェント」とは言えないことが多いんだ。
境界線を見極めるポイントがいくつかあるから、一緒に確認していこう!

パターン① 単純なLLM呼び出し(エージェントではない)

最もシンプルなのは、ユーザーの入力をそのままLLMに渡して、返ってきた結果を表示するだけのパターンです。

# 単純なLLM呼び出しの例
def simple_chat(user_message):
    response = llm.generate(user_message)
    return response

# 使用例
result = simple_chat("Pythonの変数について教えて")
print(result)

このパターンでは、以下の理由から「エージェント」とは呼べません。

  • 自律性がない - 毎回人間が指示を出す必要がある
  • ツール使用がない - LLMの知識だけで回答している
  • 状態管理がない - 過去の会話を覚えていない
  • タスク分解がない - 複雑なタスクを段階的に処理できない

これは単なる「LLMのラッパー」であり、ChatGPTのWebインターフェースとほぼ同じです。

パターン② 会話履歴を持つチャットボット(まだエージェントではない)

次のレベルとして、会話履歴を管理するチャットボットがあります。

# 会話履歴を管理するチャットボット
class ChatBot:
    def __init__(self):
        self.history = []
    
    def chat(self, user_message):
        self.history.append({"role": "user", "content": user_message})
        response = llm.generate_with_history(self.history)
        self.history.append({"role": "assistant", "content": response})
        return response

# 使用例
bot = ChatBot()
bot.chat("私の名前はリンドです")
bot.chat("私の名前は何でしたか?")  # 覚えている

このパターンは、状態管理という点で進化していますが、まだ本格的なエージェントとは言えません。
なぜなら、以下の要素が欠けているからです。

  • ツール使用能力 - 外部の情報やツールにアクセスできない
  • 自律的な判断 - 人間の指示なしには動けない
  • 目標志向の行動 - 自分で計画を立てて実行できない

パターン③ ツール使用エージェント(エージェントの入り口)

ここからが「エージェント」と呼べる領域に入ってきます。
ツール(関数)を使用できるシステムです。

# ツール使用エージェントの例
class ToolUsingAgent:
    def __init__(self):
        self.tools = {
            "search_web": self.search_web,
            "calculate": self.calculate,
            "get_weather": self.get_weather
        }
    
    def search_web(self, query):
        # Web検索を実行
        return f"検索結果: {query}に関する情報..."
    
    def calculate(self, expression):
        # 計算を実行
        return eval(expression)
    
    def get_weather(self, location):
        # 天気情報を取得
        return f"{location}の天気: 晴れ"
    
    def process(self, user_request):
        # LLMにどのツールを使うべきか判断させる
        tool_selection = llm.select_tool(user_request, self.tools.keys())
        
        if tool_selection:
            result = self.tools[tool_selection["name"]](**tool_selection["args"])
            final_answer = llm.generate_answer(user_request, result)
            return final_answer
        else:
            return llm.generate(user_request)

このパターンでは、以下の重要な要素が追加されています。

  • ツール選択 - LLMが状況に応じて適切なツールを選ぶ
  • 外部リソースへのアクセス - Web検索や計算などの機能を使える
  • 結果の統合 - ツールの実行結果を元に最終的な回答を生成

これはFunction CallingTool Useと呼ばれる機能を使ったエージェントの基本形です。

パターン④ 自律的タスク実行エージェント(本格的なエージェント)

最も高度なのが、複雑なタスクを自律的に分解・実行するエージェントです。

# 自律的タスク実行エージェントの概念例
class AutonomousAgent:
    def __init__(self):
        self.tools = {...}  # 様々なツール
        self.memory = []    # 長期記憶
        self.task_queue = []  # タスクキュー
    
    def execute_goal(self, goal):
        # 1. 目標を分析
        plan = llm.create_plan(goal)
        
        # 2. タスクに分解
        tasks = self.decompose_plan(plan)
        
        # 3. 各タスクを順次実行
        for task in tasks:
            # タスクに必要なツールを判断
            tool = self.select_tool_for_task(task)
            
            # ツールを実行
            result = self.execute_tool(tool, task)
            
            # 結果を記憶に保存
            self.memory.append({"task": task, "result": result})
            
            # 必要に応じて計画を修正
            if self.should_replan(result):
                plan = llm.replan(goal, self.memory)
                tasks = self.decompose_plan(plan)
        
        # 4. 最終結果を生成
        return self.generate_final_result(goal, self.memory)

このレベルのエージェントは、以下の高度な機能を持ちます。

  • タスク分解 - 複雑な目標を実行可能なステップに分割
  • 計画立案 - 目標達成のための手順を自分で考える
  • 動的な再計画 - 実行結果に応じて計画を修正
  • 長期記憶 - 過去の実行結果を参照して判断
  • 自律的実行 - 人間の介入なしに複数ステップを実行

これこそが、本来の意味での「AIエージェント」と言えるシステムです。

エージェントの重要な構成要素

リンドくん

リンドくん

エージェントを作るには、どんな要素が必要なんですか?

たなべ

たなべ

いい質問だね!エージェントには4つの重要な要素があるんだ。それぞれ見ていこう。

1. 推論エンジン(LLM)

エージェントの「頭脳」となる部分です。
LLMは以下の役割を担います。

  • 状況理解 - ユーザーの要求や現在の状況を理解する
  • 判断 - 次に何をすべきか決定する
  • ツール選択 - どのツールを使うべきか判断する
  • 結果の解釈 - ツール実行結果を理解し、次の行動を決める

現在、よく使われるLLMには以下のようなものがあります。

  • OpenAI: GPT-5
  • Anthropic: Claude 4.5(Opus、Sonnet)
  • Google: Gemini
  • Meta: Llama 4

2. ツール/関数(Tools/Functions)

エージェントが実際に「行動」するための手段です。
代表的なツールには以下のようなものがあります。

情報取得系

  • Web検索(Google、Bing)
  • データベース検索
  • API呼び出し
  • ファイル読み込み

情報処理系

  • 計算機能
  • データ分析
  • 画像生成・編集
  • コード実行

アクション系

  • メール送信
  • ファイル作成・保存
  • スケジュール登録
  • 外部サービスとの連携

3. メモリ(Memory)

エージェントが「覚えておく」ための仕組みです。
メモリには複数の種類があります。

短期記憶(Working Memory)
  • 現在の会話やタスクに関する情報
  • LLMのコンテキストウィンドウ内に保持
  • 一時的な情報の保存

長期記憶(Long-term Memory)

  • 過去の会話履歴
  • 学習した知識
  • ユーザーの好みや設定
  • 通常はベクトルデータベースに保存

エピソード記憶(Episodic Memory)

  • 過去の具体的な経験
  • タスク実行の履歴
  • 成功・失敗の記録

4. プランニング機能(Planning)

複雑なタスクを達成するための「計画力」です。
主に以下のような手法が使われます。

ReAct(Reasoning + Acting)
  • 「考える」と「行動する」を交互に繰り返す
  • 各ステップで推論してから行動を決定
Chain of Thought(思考の連鎖)
  • ステップバイステップで問題を分解
  • 段階的に解決策を導き出す
Tree of Thoughts(思考の木)
  • 複数の可能性を探索
  • より良い解決策を見つけるために分岐を評価

実世界でのエージェント活用例

リンドくん

リンドくん

実際にエージェントってどんなことに使われているんですか?

たなべ

たなべ

最近は身近なところでもたくさん使われているんだよ。具体例を見てみよう!

カスタマーサポートエージェント

企業のカスタマーサポートで活躍するエージェントの例です。

できること

  • 顧客の問い合わせ内容を理解
  • 過去の問い合わせ履歴を検索
  • FAQデータベースから適切な回答を探す
  • 必要に応じて人間のオペレーターにエスカレーション
  • チケットの作成と管理

エージェントである理由

  • 複数のツール(FAQ検索、チケットシステム、顧客データベース)を使用
  • 状況に応じて自律的に判断
  • 過去の会話履歴を参照して対応

リサーチアシスタントエージェント

情報収集と分析を自動化するエージェントです。

できること

  • Web上から関連情報を自動収集
  • 複数の情報源を比較・検証
  • 要約レポートの作成
  • 引用元の管理
  • 定期的な情報更新

エージェントである理由

  • 自律的に情報を探索
  • 複数のステップを計画的に実行
  • 情報の信頼性を判断

コーディングアシスタントエージェント

プログラミング作業を支援するエージェントです。

できること

  • コードの生成と修正
  • バグの特定と修正提案
  • テストコードの自動生成
  • ドキュメントの作成
  • コードレビューのアシスト

エージェントである理由

  • コード実行環境との連携
  • エラーを見て自己修正
  • 複数ファイルの関係性を理解

パーソナルアシスタントエージェント

日常業務を支援する総合的なエージェントです。

できること

  • スケジュール管理
  • メールの整理と返信
  • タスクの優先順位付け
  • リマインダーの設定
  • 情報の検索と要約

エージェントである理由

  • 複数のアプリケーションと連携
  • ユーザーの好みを学習
  • 状況に応じて自律的に判断

エージェント構築の実践的なアプローチ

リンドくん

リンドくん

自分でもエージェントを作ってみたいです!どこから始めればいいですか?

たなべ

たなべ

素晴らしい意欲だね!最近ではフレームワークを使うことで、比較的簡単にエージェントを構築できるようになったんだ。

エージェント構築フレームワーク

初心者でも使いやすい主要なフレームワークをご紹介します。

LangChain

  • 最も人気のあるエージェントフレームワーク
  • 豊富なツールとの統合
  • Python/TypeScriptで利用可能
  • ドキュメントが充実

学習の仕方

エージェント開発を学ぶための推奨ステップです。

ステップ① LLM APIの基本を学ぶ

  • OpenAI APIやClaude APIを使ってみる
  • プロンプトエンジニアリングの基礎を理解
  • 簡単なチャットボットを作成

ステップ② Function Callingを試す

  • 単純なツール(計算機、天気情報取得など)を作成
  • LLMにツールを選ばせる仕組みを実装
  • ツール実行結果をLLMに返す処理を理解

ステップ③ フレームワークを使う

  • LangChainなどのフレームワークを導入
  • エージェントの基本パターンを学ぶ
  • 既存のツールを組み合わせて使ってみる

ステップ④ メモリとプランニングを追加

  • 会話履歴の管理を実装
  • ReActパターンでエージェントを構築
  • より複雑なタスクに挑戦

注意すべきポイント

エージェント開発で気をつけるべき点もあります。

コスト管理

  • LLM APIの呼び出し回数が増えるとコストも増加
  • 無限ループに陥らないよう制限を設ける
  • ステップ数の上限を設定

エラー処理

  • ツール実行が失敗した場合の対処
  • LLMが不適切なツールを選んだ場合の処理
  • タイムアウトの設定

セキュリティ

  • ツールの実行権限を適切に制限
  • ユーザー入力の検証
  • 機密情報の取り扱いに注意

デバッグ

  • エージェントの思考過程をログに記録
  • 各ステップの実行結果を可視化
  • なぜその判断をしたのか追跡できるようにする

まとめ

リンドくん

リンドくん

今日の話で、エージェントの本質がよくわかりました!

たなべ

たなべ

よかった!最後にもう一度、重要なポイントをまとめておこう。

この記事では、「エージェント」と「単なるLLM呼び出し」の境界線について詳しく解説してきました。
最も重要なポイントを改めて整理しましょう。

エージェントの本質的な特徴

1. 自律性

  • 人間の指示なしに複数のステップを実行できる
  • 目標を与えれば、自分で計画を立てて実行する

2. ツール使用能力

  • 外部のリソースやツールにアクセスできる
  • 状況に応じて適切なツールを選択できる

3. メモリと学習

  • 過去の経験を記憶し、参照できる
  • 実行結果から学び、行動を改善できる

4. プランニング能力

  • 複雑なタスクを実行可能なステップに分解
  • 状況に応じて計画を動的に修正

単なるLLM呼び出しとの違い

  • LLM呼び出し: 「質問→回答」の1回限りの処理
  • エージェント: 「目標設定→計画→実行→評価→改善」の循環的な処理

つまり、エージェントはLLMを「道具」として使いながら、より高度な目標達成を自律的に行うシステムなのです。

これからエージェント開発を学ぶあなたへ

生成AIの世界は日々進化しており、エージェント技術もまだ発展途上です。
しかし、その基本原理を理解しておくことは、これからのAI時代を生きる上で非常に重要です。

まずは小さなエージェントから始めてみてください。
簡単なツールを1つか2つ持つエージェントを作り、それがどのように動作するのかを実際に体験することが、最良の学習方法です。

そして、エージェントの可能性と限界を理解することで、実務でのAI活用がより効果的になるはずです。

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