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RAGとは何か?Fine-tuningとの違いと選び方を整理

リンドくん

リンドくん

たなべ先生、最近AIの勉強をしていると「RAG」とか「Fine-tuning」って言葉をよく見るんですけど、これって何が違うんですか?

たなべ

たなべ

どちらもAIモデルをより賢くする手法なんだけど、アプローチが全然違うんだ。
RAGは「外部の知識を参照する」方法で、Fine-tuningは「モデル自体を学習させる」方法なんだよ。

リンドくん

リンドくん

うーん、まだよくわからないです...

たなべ

たなべ

大丈夫!今日は図解も交えながら、初心者でもわかるように丁寧に説明していくからね。
この2つの違いを理解すれば、自分のプロジェクトでどちらを使うべきか判断できるようになるよ!

AI技術の進化とともに、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を活用したアプリケーション開発が注目を集めています。
しかし、そのままのモデルでは自社のデータや最新情報に対応できないことも多く、そこで登場するのがRAG(検索拡張生成)Fine-tuning(ファインチューニング)という2つの重要な技術です。

この記事では、プログラミング学習者やAI開発に興味がある方に向けて、RAGとFine-tuningの違いを徹底的に整理し、どのような場面でどちらを選ぶべきかを明確にしていきます。
それでは、まずRAGの基本から見ていきましょう。

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RAG(検索拡張生成)とは何か?

リンドくん

リンドくん

まず「RAG」って何の略なんですか?

たなべ

たなべ

RAGはRetrieval-Augmented Generationの略で、日本語では「検索拡張生成」と訳されるんだ。
簡単に言うと、AIが答える前に関連情報を検索して、それを参考にして回答を生成する仕組みなんだよ。

RAGの基本的な仕組み

RAGは、LLMに質問する際に以下のような流れで動作します。

  1. ユーザーが質問を投げる - 例: 「当社の2024年の売上目標は?」
  2. 関連する文書を検索する - 社内文書データベースから関連情報を検索
  3. 検索結果と質問を組み合わせる - 見つかった文書と質問を一緒にLLMに渡す
  4. LLMが回答を生成する - 検索した情報を元に正確な回答を作成

この仕組みの最大の特徴は、LLMのモデル自体は変更せず、外部の知識を参照するという点です。まるで図書館で本を調べながら答案を書くようなイメージですね。

RAGのメリット

RAGには以下のような優れた点があります。

  • 最新情報に対応しやすい - データベースを更新するだけで新しい情報を扱える
  • 導入コストが低い - モデルの再学習が不要なため、比較的簡単に実装できる
  • 情報源が明確 - どの文書を参照したか追跡できるため、回答の根拠が示せる
  • 専門知識への対応 - 社内文書や特定分野の資料を参照させることで、専門的な質問に答えられる
  • 幻覚(ハルシネーション)の軽減 - 検索した実際の文書を基に回答するため、事実と異なる情報を生成しにくい

RAGのデメリットと注意点

一方で、RAGにも限界があります。

  • 検索精度に依存する - 適切な文書が見つからなければ正確な回答ができない
  • 処理速度 - 検索のステップが加わるため、回答までの時間が長くなることがある
  • コンテキストの制約 - LLMが一度に処理できるテキスト量には限界がある
  • システム構成の複雑さ - ベクトルデータベースなど、追加のインフラが必要になる

これらの特徴を理解した上で、次はFine-tuningについて見ていきましょう。

Fine-tuning(ファインチューニング)とは何か?

リンドくん

リンドくん

じゃあFine-tuningはどんな仕組みなんですか?

たなべ

たなべ

Fine-tuningは、既存のAIモデルに追加で学習させて、特定のタスクに特化させる技術なんだ。
スポーツ選手が基礎体力をつけた後に専門トレーニングをするようなイメージだね。

Fine-tuningの基本的な仕組み

Fine-tuningは以下のプロセスで行われます。

  1. ベースモデルの準備 - GPT系やLLaMAなど、すでに大量のデータで学習済みのモデルを用意
  2. 専門データの用意 - 自社のデータや特定タスクのデータセットを準備
  3. 追加学習の実施 - ベースモデルに対して専門データで追加の学習を行う
  4. 調整されたモデルの完成 - 特定のタスクに最適化されたモデルが出来上がる

重要なのは、モデルの内部パラメータ自体を変更するという点です。これにより、モデルの振る舞いそのものが変化します。

Fine-tuningのメリット

Fine-tuningには以下のような強みがあります。

  • 高速な推論 - 追加の検索処理が不要なため、回答が速い
  • 一貫した出力スタイル - 学習データに基づいて、特定の文体や形式で回答できる
  • コンテキスト効率 - 毎回長い文書を入力する必要がない
  • 特定タスクへの最適化 - そのタスクに特化した高精度な処理が可能
  • プライバシー保護 - 学習後は外部データベースへのアクセスが不要

Fine-tuningのデメリットと注意点

しかし、Fine-tuningにも課題があります。

  • 高いコスト - GPUリソースと専門知識が必要で、費用がかかる
  • 更新の手間 - 情報を更新するたびに再学習が必要
  • データ準備の大変さ - 質の高い学習データを大量に用意する必要がある
  • 過学習のリスク - 学習データに偏りがあると、柔軟性が失われる
  • 専門知識の要求 - 機械学習の知識がないと適切に実施できない

これらの違いを踏まえて、次はRAGとFine-tuningを具体的に比較していきます。

RAGとFine-tuningの徹底比較

リンドくん

リンドくん

結局どっちを使えばいいんでしょうか?

たなべ

たなべ

それはプロジェクトの目的や状況によるんだ。
比較表を見ながら、それぞれの特徴を整理してみよう。

主要な違いの比較表

項目RAGFine-tuning
知識の保存方法外部データベースモデルのパラメータ内
導入コスト低〜中
運用コスト中(検索処理)低(推論のみ)
情報更新容易(DB更新のみ)困難(再学習必要)
回答速度遅い(検索含む)速い
専門知識の要求
情報源の透明性高(引用可能)
カスタマイズ性限定的高い

使い分けの基準

それぞれに適したシナリオを具体的に見てみましょう。

RAGが適している場面

  • 頻繁に情報が更新される場合(ニュース、法規制、製品情報など)
  • 情報源の明示が重要な場合(医療、法律相談など)
  • 予算や技術リソースが限られている場合
  • 迅速にプロトタイプを作りたい場合
  • 社内文書の活用など、既存の文書を活かしたい場合

Fine-tuningが適している場面

  • 特定の出力形式やスタイルが必要な場合(カスタマーサポート、コード生成など)
  • 高速な応答が重要な場合
  • 安定した品質の出力が求められる場合
  • プライバシーやセキュリティが重要で、外部DBアクセスを避けたい場合
  • 十分な学習データと予算がある場合

実は、これら2つは必ずしも対立する選択肢ではありません。次のセクションでは、両方を組み合わせる方法についても触れていきます。

RAGとFine-tuningを組み合わせる方法

リンドくん

リンドくん

先生、RAGとFine-tuningって両方使うこともできるんですか?

たなべ

たなべ

素晴らしい質問だね!実は両方を組み合わせることで、それぞれの長所を活かせるんだ。
これが最近の最先端のアプローチなんだよ。

ハイブリッドアプローチの利点

RAGとFine-tuningを組み合わせることで、以下のような強力なシステムを構築できます。

  • Fine-tuningで基本的な振る舞いを最適化 - 特定のトーンや形式での回答を学習
  • RAGで最新情報を補完 - 頻繁に変わる情報は検索で対応
  • 高精度と柔軟性の両立 - それぞれの弱点を補い合う

活用例

このハイブリッドアプローチは、以下のようなシチュエーションで活用できます。

  • 企業のAIアシスタント - 社内文書(RAG)と会話スタイル(Fine-tuning)の組み合わせ
  • 専門分野のチャットボット - 最新の研究論文(RAG)と専門用語の理解(Fine-tuning)
  • カスタマーサポート - 製品マニュアル(RAG)と対応トーン(Fine-tuning)

このように、2つの技術を組み合わせることで、より高度なAIシステムを構築できます。

プロジェクトに合った選択をするための判断基準

リンドくん

リンドくん

自分のプロジェクトではどちらを選べばいいか、まだ迷ってます...

たなべ

たなべ

大丈夫!明確な判断基準を持っていれば、自信を持って選択できるよ。
いくつかの重要な質問に答えていくことで、最適な選択が見えてくるんだ。

判断のためのチェックリスト

以下の質問に答えることで、自分のプロジェクトに最適な選択が見えてきます。

情報更新の頻度について

  • 扱う情報は頻繁に更新されますか?
    • はい → RAGが有利
    • いいえ → Fine-tuningも検討可能

予算とリソースについて

  • GPUリソースや学習コストの予算はありますか?
    • 十分にある → Fine-tuningも選択肢
    • 限られている → RAGがおすすめ

出力の形式について

  • 特定の形式やスタイルでの一貫した出力が必要ですか?
    • はい → Fine-tuningが有利
    • いいえ → RAGで十分

情報源の透明性について

  • 回答の根拠となる情報源を明示する必要がありますか?
    • はい → RAGが必須
    • いいえ → どちらでも可能

データの準備状況について

  • 高品質な学習データを大量に用意できますか?
    • はい → Fine-tuningが有効
    • いいえ → RAGから始めるべき

段階的なアプローチ

実際のプロジェクトでは、以下のような段階的なアプローチがおすすめです。

フェーズ① RAGでプロトタイプ(1-2週間)
  • まずはRAGで素早くプロトタイプを作成
  • ユーザーフィードバックを収集
  • システムの課題を特定
フェーズ② 評価と改善(2-4週間)
  • RAGの精度や速度を評価
  • Fine-tuningが必要な部分を特定
  • 学習データの収集を開始
フェーズ③ 必要に応じてFine-tuning(4-8週間)
  • 特定のタスクでFine-tuningを実施
  • RAGと組み合わせたハイブリッドシステムを構築
  • 本番環境での運用開始

この段階的アプローチにより、リスクを最小限に抑えながら最適なシステムを構築できます。

具体的な選択例

以下に、いくつかの典型的なシナリオと推奨される選択を示します。

シナリオ① 社内文書検索システム

  • 推奨: RAG
  • 理由: 文書は定期的に更新され、情報源の明示が重要

シナリオ② カスタマーサポートボット

  • 推奨: Fine-tuning + RAG(ハイブリッド)
  • 理由: 一貫した対応(Fine-tuning)と最新情報(RAG)の両方が必要

シナリオ③ コード生成アシスタント

  • 推奨: Fine-tuning
  • 理由: 特定のコーディングスタイルや規約への適応が重要

シナリオ④ ニュース要約サービス

  • 推奨: RAG
  • 理由: 情報が日々更新され、元記事の引用が重要

このように、プロジェクトの特性に応じて最適な選択は変わってきます。

まとめ

リンドくん

リンドくん

だいぶ理解できました!でも実際に使ってみないと不安です...

たなべ

たなべ

その気持ちはよくわかるよ。でもまずは小さく始めてみることが大切なんだ。
簡単なRAGシステムから試してみて、徐々に複雑なものに挑戦していけばいいんだよ。

この記事では、RAG(検索拡張生成)とFine-tuning(ファインチューニング)について、その違いから選び方まで徹底的に解説してきました。

重要なポイントを振り返ってみましょう。

RAGの特徴

  • 外部の知識を検索して参照する仕組み
  • 導入が容易で、情報更新も簡単
  • 最新情報や頻繁に変わる情報の扱いに優れる
  • 情報源の明示が可能

Fine-tuningの特徴

  • モデル自体に知識を学習させる仕組み
  • 特定のタスクやスタイルへの最適化が可能
  • 推論速度が速い
  • コストと専門知識が必要

ハイブリッドアプローチ

  • 両方の長所を活かせる最先端の方法
  • タスクに応じて使い分けることで最大の効果

AI技術は、これからのソフトウェア開発において不可欠な要素となっていきます。
RAGとFine-tuningという2つの重要な技術を理解し、適切に使い分けられるようになることで、あなたのエンジニアとしての価値は大きく高まるはずです。

ぜひ今日から、小さなプロジェクトでこれらの技術を試してみてください。実際に手を動かして学ぶことが、最も効果的な学習方法です。応援しています!

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