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ベクトルDBとは何か?RAGで必要になる理由を初心者にもわかりやすく解説

リンドくん

リンドくん

先生、最近「ベクトルDB」っていう言葉をよく聞くんですけど、これって何ですか?普通のデータベースとは違うんですか?

たなべ

たなべ

今、AI開発の現場でベクトルDBが大注目されているんだ。
特にChatGPTのようなLLM(大規模言語モデル)をもっと賢く使うための技術「RAG」では必須なんだよ。

リンドくん

リンドくん

RAG...?なんだか難しそうですね...

たなべ

たなべ

心配しないで!今日はRPGゲームのアイテム管理に例えながら、誰でも理解できるように説明していくよ。きっと「なるほど!」ってなるはずさ。

AI技術の急速な発展により、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)が私たちの生活に浸透してきました。
しかし、LLMには「最新情報を知らない」「企業独自のデータにアクセスできない」といった課題があります。

この課題を解決する技術がRAG(Retrieval-Augmented Generation: 検索拡張生成)であり、その中核を担うのがベクトルDB(ベクトルデータベース)なのです。

本記事では、プログラミングを学び始めた方でも理解できるよう、ベクトルDBの基本概念からRAGでの役割まで、わかりやすく解説していきます。

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ベクトルDBとは?まずは基本から理解しよう

リンドくん

リンドくん

そもそも「ベクトル」って何でしたっけ?数学で習った気がするんですが...

たなべ

たなべ

そうそう!数学で出てくる「向きと大きさを持つ量」だよね。
でもAIの世界では、もっと面白い使い方をするんだ。「意味を数値で表現したもの」と考えるとわかりやすいよ。

ベクトルDBの基本概念

ベクトルDB(ベクトルデータベース)とは、データを「ベクトル」という数値の並びに変換して保存し、似ている情報を高速に検索できる特殊なデータベースです。

従来のデータベース(MySQLやPostgreSQLなど)が「完全一致検索」を得意とするのに対し、ベクトルDBは「意味的な類似性検索」を得意とします。

例えば、従来のデータベースでは以下のような検索しかできません。

  • 「リンゴ」というキーワードを含む記事を検索
  • 価格が1000円以下の商品を検索
  • 登録日が2025年以降のユーザーを検索

一方、ベクトルDBでは次のような検索が可能になります。

  • 「リンゴ」に関連する情報を検索(「果物」「赤い」「甘い」などの記事も該当)
  • ある商品と似た特徴を持つ商品を検索
  • 特定のユーザーに似た行動パターンを持つユーザーを検索

RPGに例えると?アイテム検索システムとして理解しよう

ベクトルDBの仕組みを、RPGゲームのアイテム管理に例えてみましょう。

従来のデータベース(キーワード検索)の場合

あなたがRPGで「炎の剣」を探しているとします。従来のデータベースでは、以下のような検索になります。

  • 検索ワード: 「炎の剣」
  • 結果: 「炎の剣」という名前のアイテムのみヒット
  • 問題点: 「火炎の大剣」「灼熱の刀」など、似た性能の武器は見つからない

ベクトルDB(意味的検索)の場合

同じく「炎の剣」を検索すると、こうなります。

  • 検索: 「炎属性の武器が欲しい」
  • 結果:
    • 「炎の剣」(完全一致)
    • 「火炎の大剣」(似た属性)
    • 「灼熱の刀」(似た効果)
    • 「フレイムロッド」(炎魔法が使える)

このように、意味的に関連するアイテムをまとめて見つけられるのがベクトルDBの強みなのです。

ベクトル化とは?言葉を数字に変換する魔法

ではどうやって「意味」を検索できるのでしょうか?その秘密が「ベクトル化(エンベディング)」です。

例えば、以下の文章をAIがベクトル化すると、このようなイメージになります。

「炎の剣」 → [0.8, 0.2, 0.9, 0.1, ...](1536個の数値)
「氷の杖」 → [0.1, 0.9, 0.3, 0.8, ...](1536個の数値)
「火炎の大剣」 → [0.7, 0.3, 0.8, 0.2, ...](1536個の数値)

これらの数値の並び(ベクトル)は、意味が似ているほど数値のパターンも似ているという特徴を持ちます。
「炎の剣」と「火炎の大剣」は意味が近いので、ベクトルのパターンも似ているのです。

ベクトルDBは、この数値パターンの類似度を計算することで、意味的に近い情報を素早く見つけ出すことができます。

なぜ今ベクトルDBが注目されているのか?

ベクトルDBが注目される理由は、以下の3つにまとめられます。

  1. LLMの普及 → ChatGPTなどのAIをもっと賢く使うために必要
  2. 意味検索の需要増加 → キーワード検索では限界がある場面が増えている
  3. RAG技術の台頭 → AIに最新情報や独自データを使わせる技術として必須

特にRAG(検索拡張生成)という技術では、ベクトルDBが中心的な役割を果たします。次のセクションでは、このRAGについて詳しく見ていきましょう。

RAG(検索拡張生成)とは?LLMの弱点を補う技術

リンドくん

リンドくん

先生、RAGって何の略なんですか?

たなべ

たなべ

Retrieval-Augmented Generationの略で、日本語では「検索拡張生成」と呼ばれているよ。簡単に言うと、AIに関連情報を先に見せてから回答させる仕組みなんだ。

LLMだけでは足りない理由

ChatGPTやGeminiなどのLLM(大規模言語モデル)は非常に優秀ですが、以下のような弱点があります。

  • 学習データの更新日以降の情報を知らない
    • 例: 「昨日発表された新製品について教えて」→ 答えられない
  • 企業や個人の独自データにアクセスできない
    • 例: 「うちの会社の就業規則を教えて」→ 答えられない
  • 情報源が不明確
    • 例: 「その情報はどこから?」→ 出典を示せない

これらの問題を解決するのがRAGなのです。

RAGの基本的な仕組み

RAGは以下のような流れで動作します。

1. ユーザーが質問する

ユーザー: 「当社の有給休暇の取得ルールを教えてください」

2. 関連情報をベクトルDBから検索

ベクトルDBに質問をベクトル化して検索
↓
似た意味を持つ社内文書を取得
- 「就業規則第15条 有給休暇について」
- 「有給休暇取得マニュアル」
- 「休暇申請フローチャート」

3. 検索結果とともにLLMに質問

LLMへの指示: 
「以下の情報を参考に、有給休暇の取得ルールについて説明してください。

【参考情報】
就業規則第15条...(検索で取得した文書)
有給休暇取得マニュアル...
...

4. LLMが根拠に基づいて回答

LLM: 「当社の有給休暇制度は以下の通りです。
就業規則第15条によると...(正確で根拠のある回答)」

このように、ベクトルDBで関連情報を検索し、それをLLMに見せてから回答させるのがRAGの基本的な仕組みです。

なぜベクトルDBがRAGに必須なのか?

RAGでベクトルDBが重要な理由は以下の3つです。

1. 意味的な検索が可能

従来のキーワード検索では、質問と全く同じ言葉が含まれていないと検索できません。しかしベクトルDBなら、言葉が違っても意味が似ていれば検索できます。

例:

  • 質問: 「有休の使い方を知りたい」
  • 従来の検索: 「有休」というキーワードで検索(「有給休暇」という表記の文書は見逃す)
  • ベクトルDB: 意味が似ている「有給休暇」「年次休暇」などの文書も取得できる

2. 大量のデータから高速に検索

企業には膨大な文書やデータがあります。ベクトルDBは、数百万件のデータからでも、類似度の高い情報を瞬時に取得できます。

3. 多言語対応が容易

ベクトル化により、異なる言語でも意味が似ていれば検索できます。日本語で質問しても、英語の文書から関連情報を取得できるのです。

RAGの利用例

RAG技術は、すでに様々な場面で活用されています。

  • 社内ナレッジ検索システム → 膨大な社内文書から必要な情報を素早く取得
  • カスタマーサポートAI → 過去の問い合わせ履歴を参照して回答
  • 医療診断支援 → 論文や症例データベースから関連情報を検索
  • 法律相談AI → 判例や法令データベースを活用した回答生成

このように、RAGはLLMに専門知識や最新情報を使わせるための非常に強力な技術なのです。

ベクトルDBと従来のデータベースの違い

リンドくん

リンドくん

MySQLとかPostgreSQLとは、何が違うんですか?

たなべ

たなべ

従来のデータベースは「正確な一致」を見つけるのが得意で、ベクトルDBは「似ているもの」を見つけるのが得意なんだ。使い分けが重要だよ。

検索方式の違い

従来のデータベース(RDB)
  • 完全一致検索が基本
  • 例: 「価格が1000円のチョコレート」→ ちょうど1000円の商品のみヒット
  • 得意: 正確なデータの管理、トランザクション処理

ベクトルDB

  • 類似度検索が基本
  • 例: 「チョコレートに似た商品」→ ココア、チョコバーなども含めて検索
  • 得意: 意味的な類似性の検索、AIアプリケーション

データ構造の違い

従来のデータベース

商品テーブル
┌──────┬────────┬────┐
│ ID   │ 商品名  │ 価格│
├──────┼────────┼────┤
│ 1    │ リンゴ  │ 100│
│ 2    │ バナナ  │ 150│
│ 3    │ オレンジ│ 120│
└──────┴────────┴────┘

行と列で整理されたテーブル構造です。

ベクトルDB

ベクトルストア
┌──────┬────────┬──────────────────┐
│ ID   │ 商品名  │ ベクトル         │
├──────┼────────┼──────────────────┤
│ 1    │ リンゴ  │ [0.8,0.1,0.9,...]│
│ 2    │ バナナ  │ [0.7,0.2,0.8,...]│
│ 3    │ オレンジ│ [0.8,0.1,0.85,...]│
└──────┴────────┴──────────────────┘

各データがベクトル(数値の配列)として保存されます。

インデックスの仕組み

従来のデータベース

  • B-Treeインデックスなどを使用
  • データを木構造で管理し、検索を高速化

ベクトルDB

  • HNSW(Hierarchical Navigable Small World)IVF(Inverted File)などの特殊なインデックス
  • 高次元ベクトル空間での近傍探索を高速化

どちらを使うべきか?

実際のシステムでは、両方を組み合わせて使うことが多いです。

従来のRDBを使うべき場面

  • ユーザー情報の管理(ID、名前、メールアドレスなど)
  • 商品の在庫管理(正確な数値が重要)
  • 注文履歴の記録(トランザクション処理が必要)

ベクトルDBを使うべき場面

  • 類似商品のレコメンド機能
  • 自然言語での検索機能
  • RAGによるAI回答生成

組み合わせ例: ECサイト

1. ユーザーが「赤いワンピース」と検索
2. ベクトルDBで類似商品を検索
   → [商品ID: 123, 456, 789]
3. 従来のDBで商品詳細を取得
   → 価格、在庫、配送情報など
4. ユーザーに表示

このように、それぞれの強みを活かした使い分けが重要です。

代表的なベクトルDBサービスと選び方

リンドくん

リンドくん

実際にベクトルDBを使いたいときは、どれを選べばいいんですか?

たなべ

たなべ

用途や予算によって最適な選択肢が変わるんだ。主要なサービスとその特徴を見ていこう。

主要なベクトルDBサービス

1. Pinecone

  • 特徴: フルマネージド型で最も使いやすい
  • 料金: 無料プランあり(100万ベクトルまで)
  • 向いている用途: 小〜中規模のRAGシステム
  • メリット: セットアップが簡単、スケーラブル
  • デメリット: 大規模利用時のコストが高め

2. Weaviate

  • 特徴: オープンソースで柔軟性が高い
  • 料金: 無料(セルフホスティング)、クラウド版は従量課金
  • 向いている用途: カスタマイズ性が必要なシステム
  • メリット: GraphQLでの操作、ハイブリッド検索対応
  • デメリット: 学習コストがやや高い

3. Qdrant

  • 特徴: Rust製で高速、オープンソース
  • 料金: 無料(セルフホスティング)、クラウド版あり
  • 向いている用途: パフォーマンス重視のシステム
  • メリット: 非常に高速、フィルタリング機能が充実
  • デメリット: 比較的新しいサービスで情報が少ない

4. Chroma

  • 特徴: Pythonネイティブ、軽量
  • 料金: 完全無料(オープンソース)
  • 向いている用途: 個人開発、プロトタイピング
  • メリット: セットアップが非常に簡単
  • デメリット: 大規模システムには不向き

5. Milvus

  • 特徴: 大規模システム向け、エンタープライズ対応
  • 料金: 無料(セルフホスティング)、マネージド版あり
  • 向いている用途: 大規模商用システム
  • メリット: 高いスケーラビリティ、豊富な機能
  • デメリット: セットアップが複雑

選び方のポイント

初心者・個人開発の場合

ChromaまたはPinecone(無料枠)がおすすめ

理由:

  • セットアップが簡単
  • 豊富なチュートリアル
  • 無料で始められる

中小企業でのビジネス利用

PineconeまたはWeaviate(クラウド版)がおすすめ

理由:

  • マネージドサービスで運用が楽
  • サポートが充実
  • スケーラビリティ確保

大規模システム・エンタープライズ

MilvusまたはWeaviate(セルフホスト)がおすすめ

理由:

  • 大量データに対応
  • カスタマイズ性が高い
  • コスト最適化しやすい

ベクトルDBの未来と学習の次のステップ

リンドくん

リンドくん

ベクトルDBって、これからもっと重要になっていくんですか?

たなべ

たなべ

間違いなくそうだね!AIネイティブ時代のエンジニアにとって、ベクトルDBは必須のスキルになっていくよ。
今のうちから基礎を学んでおくと、将来大きなアドバンテージになるはずさ。

まとめ

リンドくん

リンドくん

今日はたくさん学べました!ベクトルDBって、最初は難しそうだと思ったけど、実はすごく面白いですね!

たなべ

たなべ

よかった!最初は誰でも難しく感じるものだけど、実際に手を動かしてみると「なるほど!」ってなるよね。これからのAI時代、ベクトルDBを使いこなせるエンジニアは本当に強いからね。

この記事では、ベクトルDBの基本からRAGでの活用方法まで、プログラミング初心者の方でも理解できるよう解説してきました。

重要なポイントをおさらいしましょう。

  • ベクトルDBは「意味的な類似性」で検索できる特殊なデータベース
  • RAGは、LLMに関連情報を与えてより正確な回答を生成する技術
  • ベクトルDBはRAGの中核を担い、適切な情報検索を可能にする
  • 従来のRDBとは役割が異なり、使い分けが重要
  • Chroma、Pineconeなど、初心者でも扱いやすいサービスが充実

ChatGPTやGeminiの登場により、AIは私たちの生活に急速に浸透しています。しかし、これらのLLMを本当に実用的なシステムにするには、ベクトルDBとRAGの知識が不可欠です。

今日学んだ内容は、あなたがAIネイティブエンジニアとして成長するための重要な一歩です。まずは簡単なコードから始めて、徐々に複雑なシステムに挑戦していってください。

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